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デビュー9カ月で永田裕志の三冠王座に挑戦…安齊勇馬24歳は“全日本プロレスを背負う男”になれるのか?「顔面がどうなろうが、骨が折れようが…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/06/15 18:00
2022年9月にデビューした全日本プロレスの新鋭・安齊勇馬(24歳)。6月17日の大田区総合体育館で、永田裕志の持つ三冠ヘビー級王座に挑む
10月には宮原健斗らと組んで新日本のヤングライオンたち、藤田晃生、中島佑斗、大岩陵平に永田が加わった8人タッグマッチでバチバチやり合った。若手の戦いは互いに目の色が違う。
11月には世界最強タッグリーグにも出場が許され、安齊のタッグパートナーを永田が務めた。
「次の挑戦者、オレじゃダメですか」
安齊は、今年3月からジャンピング・ニー・アタックを使うようになった。鶴田のようなきれいさはないが、気迫は伝わってくる。永田はこう証言する。
「好青年ですよ。外見はいいし。新日本流の戦い方というか、全日本の選手でありながら新日本のようなレスラーになってしまうのかもしれない」
5月29日の後楽園ホール、リングサイドで永田とT-Hawk(GLEAT)の三冠ヘビー級選手権試合を見ていた安齊は、言葉では表せない悔しさを感じたという。本来はチャンピオンカーニバルに優勝した芦野祥太郎がその場で戦っているはずだったが、腕を骨折したために永田への挑戦は叶わなかった。「全日本のシンボルを全日本の所属じゃない選手が争っている」ことに、安齊の心は動いた。
T-Hawkを相手に防衛を果たした永田は、背後に鋭い眼光を感じたという。
「何か言いたいことがあるなら言えよ」
「次の挑戦者、オレじゃダメですか」
「断る理由がないから」と永田はこれを受けた。
永田裕志はニヤリ「あれは王道じゃなくて、闘魂だよ」
「気迫が見たい。技術は二の次。それを安齊には植え付けたい」
安齊のデビュー戦を前にそう語っていた永田の言葉が変わった。挑戦を表明した後、試合で安齊は永田に突っかかっていった。
「あれは王道じゃなくて、闘魂だよ。安齊は我々、新日本プロレス勢を戦っているうちに闘魂、戦う心、ストロングスタイルを吸収し始めて、それを出すようになった。叩いて、叩いて、そこから這い上がってきたものだけが、トップに立てる。取ってみろよ。お前らの象徴、三冠王座を。闘魂むき出しの安齊、いいじゃない。我々の流儀に従って谷底に突き落としてやる。安齊、最高だよ。だから、潰しがいがある」
永田はニヤッと笑った。
「全日本プロレス内部が混沌としている中で、安齊は危機感を持ったのかもしれない。最近は体が大きくなって、少しプロらしい体になって来た。まだ細いけどね、厚みが出てきた。リングで体も自然に動くようになった。新しい武器も持ったし、チャンピオンカーニバルでは優勝した芦野にも勝っている。成長しているのは間違いない」