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デビュー9カ月で永田裕志の三冠王座に挑戦…安齊勇馬24歳は“全日本プロレスを背負う男”になれるのか?「顔面がどうなろうが、骨が折れようが…」
posted2023/06/15 18:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
全日本プロレスの新人・安齊勇馬が、6月17日に大田区総合体育館で三冠ヘビー級王座に挑戦する。安齊は24歳だが、まだデビューして9カ月のグリーンボーイだ。
現在の三冠王者は、過去2度IWGP王座に就いて“ミスターIWGP”と呼ばれた新日本プロレスの永田裕志。2002年の初戴冠時には、当時、橋本真也が持っていた9回の連続防衛記録を10回に更新した。ノアのリングでは2014年には森嶋猛を破りGHCヘビー級王座も巻き、4度防衛している。その永田が今年の2月19日に全日本プロレスの宮原健斗をバックドロップ・ホールドで破り、69代目の三冠王者となった。
“ジャンボ鶴田の系譜に連なる男“安齊勇馬の素性
永田の54歳(2月19日時点・現在は55歳)での戴冠は、天龍源一郎の52歳を超える最年長記録になった。同時に永田は史上5人目のメジャー3団体の看板タイトルを巻いた男にもなった。佐々木健介、高山善廣、武藤敬司、小島聡というグランドスラム達成者のリストに、永田の名前が新たに加わった。
2022年9月18日、日本武道館。安齊は全日本プロレスでデビューした。相手は同年6月から全日本プロレスに参戦していた永田だった。新人が他団体の選手とデビュー戦を行うのは異例だ。
永田はそれまで、藤田和之や岡倫之のデビュー戦の相手をしたことがある。全日本プロレスが特別なオファーを永田に出したことで、安齊にかける期待の大きさが伝わってきた。
中学時代は野球をやっていたという安齊だが、深夜にテレビで見たプロレスに一目惚れして、翌日には「もう野球は続けない」と監督に言ったという。高校からプロレスをやるためにレスリングを始め、中央大学に進んだ。朝6時から走って、21時まで練習した。出身大学の系譜では、ジャンボ鶴田や諏訪魔の後輩ということになる。
安齊は全日本プロレスの50周年大会、日本武道館という大会場で、鈴木修が生演奏する「安齊勇馬オリジナルテーマ曲」で入場した。「オーッ」という雄叫びをあげると花道を走った。
188センチ、105キロ。まだ、ぎこちなさはあったが、ドロップキックやきれいなダブルアーム・スープレックスを繰り出して、永田の胸を借りた。最後はナガタロックⅡで締め上げられてしまったが、上々のデビュー戦だった。
その翌日には後楽園ホールで鈴木みのるとのシングルマッチが組まれた。海千山千の鈴木は安齊を翻弄した。