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芸能界入りで勘当、顔面負傷のトラウマ…白川未奈、泣き崩れてもタダでは起きない“ド根性”プロレス人生「生まれた時から“闘い”だった」
posted2023/06/17 11:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Essei Hara
地獄から這い上がったと思ったら、また地獄に落ちた。天国にいられたのは、たった1カ月だった。
スターダムの人気レスラーである白川未奈は、4月23日のビッグマッチ、横浜アリーナ大会で“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム王座を獲得した。歴代最多15回の防衛記録を持つ上谷沙弥を下しての戴冠。白いベルト挑戦は3度目、上谷には2度目の挑戦だった。
昨年11月の対戦で、白川は地獄に落ちた。上谷が得意とするコーナーからの飛び技フェニックス・スプラッシュを顔面に食らい、3カウントを聞いた。白川は肩を上げる動きをしていたが、アゴと口腔部を負傷。歯が折れてもいた。3カウントは、事実上のレフェリーストップだった。
負けは負け。しかし白川は納得がいかない。
「終わってない。負けてない」
負傷欠場している時もずっとそう思い続けた。アゴが動かせない間は、咀嚼ができないから上を向いてゼリー飲料を口に流し込むしかなかったという。白川の時間は止まったままだった。
負傷後に結成した「クラブ・ヴィーナス」
ただ、動いていた部分もあった。復帰すると海外の選手を次々とスカウトし、新チーム「クラブ・ヴィーナス」を結成。もともと所属していた、中野たむ率いる「コズミック・エンジェルズ(コズエン)」のユニット内ユニットのような形だったが、4.23横浜大会を前に独立している。コズエンのメンバーだった月山和香も白川についてきた。
独立は白いベルト獲得に向け退路を断つためだった。同時にリーダーとして試合を重ねることで成長していったようにも見える。白川はキャビンアテンダントを目指していた時期もあり、いつも海外、世界を意識してきた。クラブ・ヴィーナスという多国籍ユニットは、白川らしいものでもあった。
「みんなファイトスタイルも性格も違いますね。これまでも視野を広く持とうと思って生きてきたけど、知らないことがたくさんありました。レストランでのマナーひとつにしても“それはイギリスでは絶対やっちゃダメだよ”とマライア(・メイ)に言われたり。ジーナはオーストラリアの選手なんですけど、親はイラク出身。普段はボディガードの仕事もしてると言ってましたね。そういう人とユニットを組むレスラー人生、面白いなって」
一緒に食事に行ったり、巡業中のオフにはユニバーサルスタジオに行ったりと「メンバーの生活のすべてをヘルプできるようにしてます」と白川。
「できるだけいろんな経験をして、日本を知ってほしい。“お客さん”で終わってほしくないんですよ。日本語も覚えてほしいし、試合でも日本語でアピールしてくれたらいいなと思うし。それに、来てもらったからにはスターダムのプロレスを知ってほしいですね。だから練習とか試合後に厳しく言うこともあります」