レフェリーとスーパーバイザーは加藤ペアに事情を聞き、やりとりののち、失格が告げられた。危険行為、すなわち「行動規範」違反と断定、ボールガールが激しく泣いている状況から、失格という重い処分になった。

大丈夫そうに見えたボールガールだったが…

　主審が様子を見に行ったとき、また、そのあと加藤が謝罪に行ったとき、ボールガールは「大丈夫」と応じているように見える。だが、事が大きくなるにつれ、彼女はパニックを起こしたのではないか。胸を押さえていたが、どこかを負傷した様子ではない。激しく泣きじゃくり、そのうち過呼吸状態に陥ったのか。これは想像だが、スタッフとしての責任感から、自分のせいで試合が台無しになるのを恐れたのかもしれない。

ボールガールに駆け寄って謝罪する加藤　©KYODO

　現地プレスセンターのモニターに流れる映像では、4人の選手とレフェリーらの会話は断片的にしか耳に入ってこなかったが、外国の通信社による報道なども参照すると、相手ペアはレフェリーとスーパーバイザーに「失格だ」と強く主張したようだ。

線審にボールを当てたジョコビッチも失格に

　昨年の全仏では、女子選手が苛立ってラケットを投げ、跳ねたラケットが観客席の子供をかすめる出来事があった。このとき大会側は失格ではなく警告としたが、処分は寛大すぎるという声もあったと記憶している。昨年のウィンブルドンではステファノス・チチパス（ギリシャ）が観客席にボールを打ち込んだが、不問にされた。一方で、厳しい処分が科されたものでは、20年全米オープンでノバク・ジョコビッチ（セルビア）が腹立ちまぎれに、方向を確認せずに打ったボールが線審に当たり、失格となった例もある。

　こうしたアクシデントをすべて把握しているレフェリーとスーパーバイザーが総合的に判断し、厳格にルールを適用したと思われる。

ボールガールを「立たせたまま」の謎

　気になるのは、ボールガールをしばらくコートに立たせたままにしたことだ。これは主審とボールパーソンの管理者の不手際だろう。業務を続けられないのは明らかなのだから、早々に外に連れ出して落ち着かせ、そのうえで話を聞くべきだった。ただ、ボールガールを退場させなかったのは、その場にとどめ、時間を置かずに事情を聞きたかったから、と見ることもできる。ともあれ、泣きじゃくる様子を見たレフェリーとスーパーバイザーは、事態を重く受け止めただろう。それが加藤の行為が非常に危険であったと判断する根拠になった可能性がある。

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