加藤は裁定に納得できないとして、四大大会のルールなどを決める最高機関、グランドスラム・ボード（理事会）に訴えたという。ただし、『グランドスラム公式ルールブック』には「すべての失格の場合、グランドスラム・スーパーバイザーと協議したレフェリーの決定は最終的なものであり、異議申し立てはできない」との一項があり、加藤の訴えが受理されるかは不透明だ。なお、ルールブックは、処罰を受けた選手は「罰金を支払ったのち、グランドスラム・ボードなどに対し、不服申し立てをすることができる」としている。

優勝した混合ダブルスでも失格となる可能性があった

　加藤にとっての救いは、女子ダブルスで失格になったのち、混合ダブルスで優勝を飾ったことだ。失格とされたことで「何に対しても気持ちが入らない」状態に陥った加藤は、「もう（棄権して）帰ろうかなと思ってたぐらいだった」という。それでもパートナーのティム・プッツに励まされ、「選手として、目の前の試合をただやろう」と心に決めた。選手仲間が、それこそ顔も知らない選手も含め、「顔を上げて」「私たちがついているから」と励ましてくれたのも支えになったという。

　決勝進出を決めると「女子ダブルスの分まで頑張りたい」と話した。その表情はまだ硬かったが、メインコートのフィリップ・シャトリエで行われた決勝では、得意のネットプレーで躍動した。パートナーのプッツは優勝会見で加藤に語りかけた。

「君はここにいて、もう泣いていない。ストーリー全体としては良い終わり方だと思うよ」

ペッツと優勝の喜びを分かち合う　©JIJI PRESS

　なお、ルールブックは「ある種目で失格となった選手は他の種目でもプレーできない場合がある」と定めており、加藤ペアは混合ダブルスでも失格となる可能性があった。情状酌量というか、大会側の温情で出場が認められ、つかんだ栄冠であったことを付け加えておく。

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