「ボールキッズが泣いていると言ったのは、（事態が）恐ろしかったから、何かが起こったからです。主審はボールを見ていなかったから、私たちは『ボールが直接当たった』と言った。あとはスーパーバイザーが判断したこと、自分たちに非はないと思っている」

　パートナーのブズコバは今季、米国・チャールストンの大会で加藤とダブルスを組んだこともある。ツアーで躍進した2020年にはWTA（女子テニス協会）スポーツマンシップ賞を受賞した。これはツアー仲間の投票による選出で、フェアプレーのルールを守り、周囲に敬意を払い、コート内外で優雅にふるまう選手に贈られる。その選手が今回は、フェアプレー精神に反するとして、SNSなどで攻撃を受けている。女子選手の多くが加藤に同情し、ブズコバとソリベストルモは選手控え室で総スカンを食らう状態らしい。

　軽率な行動の代償はあまりにも大きかった。自分たちの行動が招いた事態とはいえ、これも一つの悲劇だ。ただ、2人がすでに十分すぎるほどの社会的制裁を受けたのは確かだ。

ソリベストルモ（左）とブズコバのペア　©JIJI PRESS

悪童・キリオスの正論ツイート

　加藤への擁護が連なるSNSの中で、自由奔放な言動で知られ、ときに悪童と呼ばれたニック・キリオス（豪州）のツイートに注目したい。

「意図の問題ではなく、子ども（ボールパーソン）にボールを当てたら、それは失格だ」

　これは真理だ。擁護派の多くが怒りにまかせて打ったものではないのに処分が重すぎると声を上げているが、すでに書いたように、故意かそうでないかは判定に影響を与えない。意図的であるかないかは、情状酌量の余地がある場合に限って考慮されるべきだろう。

加藤の訴えは理事会に届くのか

　レフェリーとスーパーバイザーはルールを正しく適用した。厳格すぎるという声があるのは分かるが、そもそもルールとは厳格に扱われるべきものだ。加藤には同情するが、失格の裁定が間違いだったとまでは言えない。

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