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「彼女いるの?」20代の羽生善治は聞かれ続けた… 28年前、世間が驚いた朝ドラヒロインとの婚約「結婚したら弱くなるのでは?」も七冠で吹き飛んだ 

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近藤正高

近藤正高Masataka Kondo

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posted2023/06/09 17:30

「彼女いるの?」20代の羽生善治は聞かれ続けた… 28年前、世間が驚いた朝ドラヒロインとの婚約「結婚したら弱くなるのでは?」も七冠で吹き飛んだ<Number Web> photograph by KYODO

1995年7月、七冠挑戦中に羽生善治は女優・畠田理恵さん(右)との婚約を発表した(千駄ケ谷の将棋会館で)

 羽生の“非凡なまでの普通さ”は、その後にいたっても変わらないようだ。2015年、当時44歳だった羽生を取材していたルポライターの高川武将は、「将棋界が激変期を迎えるなかにあって棋士として、また人間としてあなたの役割は何だと考えていますか」と問うたところ、《役割ですか? 役割なんて、あるんですかねぇ……》と訊き返されたという。驚いた高川がさらに「将棋界の第一人者として役割はありますよね?」と確認したところ、《いやぁ、自覚したことはないです》と羽生は答え、続けて《まあ、普通に、自然にやっていきます。役割はないですよ。自分のできることをやっていく、ということですね》と語った(『超越の棋士
羽生善治との対話』講談社、2018年)。

 自らの役割など考えず、ただ自分のできること、好きなことをやっていく。その姿勢は、社会的な意義や利益など度外視して、ひたすらに研究に打ちこむ学者のようだ。しかし、本人に自覚はなくとも、羽生が将棋界で果たした役割はあまりに大きい。それは誰もが認めるところだろう。彼が7つのタイトルで永世資格を得て、史上初の「永世七冠」を達成したのはこの2年後、2017年のことである。

<#1、#2から続く>

#1から読む
「やはり七冠は無理だ…」藤井聡太七冠で思い出す27年前「羽生はすっかり鬼になっていた」“風邪気味”だった羽生善治25歳が七冠独占した日

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