セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
久保建英、板倉滉、伊藤洋輝にイタリア王者ナポリ熱視線のナゼ…名物クセ者会長「ジャッポーネ!」と叫ぶ“極東アジア志向”とは
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/06/10 16:30
セリエA王者ナポリは久保建英、板倉滉、伊藤洋輝をリストアップしたという。果たしてその狙いは?
12年前のナポリは、破産と再生を経た6年ぶりのセリエA復帰からわずか4年目の会社だった。法人組織として尊重すべきはまず成績と経営の安定で、もし無理を重ねて4位以下でCL出場を逃すことになれば十億円単位の収入が消し飛ぶ。
指揮官と会長は眼の前のギャンブルではなく、近未来の成長と収入確保の道を選んだ。彼らは最終的に3位を確保し、CL出場という大きな一歩をクラブ史に記した。
以来、指揮官の顔ぶれは変わってもナポリは継続してセリエA上位に定着し、欧州カップ戦出場を続けている。
名将スパレッティは悲恋オペラのような別れを…
33年ぶりに悲願のスクデットを勝ち取った今季のチームはリーグ最多77得点と最少28失点を誇る、高次元でバランスのとれたチームだ。
前述したキム同様、加入1年目ながらリーグMVPを獲得したジョージア代表MFクビチャ・クバラツヘリアと今季の得点王ビクトル・オシメンを中心とする攻撃陣に、いぶし銀の主将ジョバンニ・ディロレンツォを柱とする円熟の守備陣はスクデット連覇へ十分なポテンシャルを秘めている。
来季への気がかりは、優勝監督ルチャーノ・スパレッティの退任と戦力編成の要だったSDクリスティアーノ・ジュントーリの去就だ。
来季以降のビジョンについてワンマン会長と意見を違えたスパレッティは「愛が大きすぎれば、ときに別れは必然になるのだ」と悲恋オペラのような台詞を残し、1年休養すると発表。6月7日時点の後任候補筆頭はフィオレンティーナをUEFAカンファレンスリーグ決勝に導いた次世代の智将ビンチェンツォ・イタリアーノだ。
過去8年で一級のチームを作り上げた敏腕SDジュントーリは、成績不振で捲土重来を期すユベントスからヘッドハンティングを受け、離脱が既成事実化している。
優勝イベントでピストルの弾が数発…
だが、ワンマン会長デラウレンティースはあくまで強気一辺倒だ。
「今のナポリは強い。誰が監督をやっても強いといえるほどにな」
6月4日のセリエA最終節の後、ナポリは本拠地「マラドーナ」で盛大な優勝イベントを行った。地元の有名歌手や芸能人が多数集い、歌い、笑い、花火が夜空を埋めた。広場や道は人びとの纏う水色に染まり、スタジアムの外ではかっぱらいがピストルの弾を数発空に放った。
かつてマラドーナが愛した熱狂の町のセリエA王者。
今夏の移籍市場で誰が加わることになっても、来季も欧州屈指の刺激的なチームであることは間違いない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。