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久保建英、板倉滉、伊藤洋輝にイタリア王者ナポリ熱視線のナゼ…名物クセ者会長「ジャッポーネ!」と叫ぶ“極東アジア志向”とは
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/06/10 16:30
セリエA王者ナポリは久保建英、板倉滉、伊藤洋輝をリストアップしたという。果たしてその狙いは?
ハードな守備とタフネスでスクデット獲得に大きく貢献したキムは、今季のセリエA最優秀DFとしてアジア人初の快挙となるリーグ表彰を受賞した。
市場価値を急上昇させたキムの契約解除違約金は約5000万ユーロ(約75億円)とされるが、7月の移籍市場解禁を待ってマンチェスター・Uから満額での正式オファーが届くだろうというのが現地の見方だ。
キムには韓国通貨ウォンもついてきた。今年1月、ナポリは暗号資産取引所を経営する韓国のドゥナム社とスポンサー契約を結んだ。この7月には韓国代表MFイ・ガンインがプレーするマジョルカ(スペイン)とともに韓国ツアーも行うはずだった。
Kリーグ側との調整が難航しツアー開催は流れそうだが、算盤勘定に目ざとい会長にしてみれば、手頃な投資で戦力になる上に、将来の売却益やスポンサー収入を呼び込めるアジア市場出身選手を取り込まない手はない。
マラドーナが愛した古巣で“日本人選手誕生”の機運が
あのマラドーナが愛した古巣へ、日本人選手が誕生する機運はかつてないほど高まっているといえる。
2004年の買収以来、デラウレンティース会長はシーズン開幕前から現場の指揮官やチームに「何が何でもスクデットを獲得せよ」と表立って厳命したことはない。彼にとって、優勝を狙うために借金を重ねて一流プレーヤーを買い漁る行為は愚の骨頂であり、どれだけシブチンの吝嗇家と陰口を叩かれようと、タイトルより法人組織として健全なバランスシートを優先するのがデラウレンティース流だ。
今季より前にナポリに優勝するチャンスはあった。戦術家マウリツィオ・サッリの采配3年目にして戦力も経験も充実、春先まで首位を走り、あと一歩のところでユベントスの連覇を止め損ねた17-18シーズンは記憶に新しい。
12年前、ギャンブルか近未来の成長かの分岐点
だが、それ以前にナポリのファンは10-11シーズンにも夢を見た。鬼気迫るエースFWエディソン・カバーニがゴールを量産し、気鋭の智将ワルテル・マッザーリが3バックをリバイバルし旋風を起こした2年目のシーズンだ。
終盤残り5試合で2位につけていたナポリは、逆転優勝に賭け一か八かの勝負に出るか、心身のコンディションに余力を残しながら当時のチャンピオンズリーグ出場圏だった3位狙いに徹するか、選択を迫られた。