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ドイツ地元記者が語る、23歳伊藤洋輝が“発見された”瞬間「Google検索しても引っかからない」けど「W杯メンバーに入るのでは」《日本代表デビュー》
posted2022/06/03 11:05
text by
円賀貴子Takako Maruga
photograph by
Kiichi Matsumoto
苦しいシーズンを、逆転残留というハッピーエンドで終えたシュツットガルト。5月14日の最終節ケルン戦で1-1で迎えた92分、2-1の劇的ゴールを決めてヒーロー、いやそれどころかレジェンドになったのは遠藤航だが、その得点につながる左コーナーキックを頭で逸らしてアシストしたのが、伊藤洋輝だった。
今回の代表戦シリーズで初めてA代表入りした伊藤の急激な成長ぶりには、ドイツでは2021年秋から驚きと称賛の声が挙がっていた。もうすぐウィンターブレークを迎える21年12月、DFL主催で行われたリモート取材で、キャプテンの遠藤航に「伊藤選手は、近い将来日本代表で活躍できそうな逸材でしょうか?」と聞いてみると、「自分より評価が高いくらい。このままいけば、何の心配もない」という答えが返ってきた。
さて、ドイツでの伊藤の飛躍は、どう始まったのだろうか。
「伊藤は白紙だ」の真意
「伊藤は白紙だ」と語るのは、長年キッカー誌でシュツットガルトを担当するゲオルゲ・モシディス記者だ。何も書き込まれていない一枚の紙。誰も知らない、何を期待したら良いかもわからない無名の選手という意味である。「なにしろ日本の2部リーグから来て、まずはセカンドチームでやらせると聞いていたし、レンタル料もほぼタダに等しかった」ことも期待度と注目度を低くしていた。
この言葉には聞き覚えがある……そう、2010年の夏、ユルゲン・クロップ監督率いるドルトムントに、香川真司が入団した時に耳にした言葉とほぼ同じ(香川は最初から完全移籍。セレッソにはトレーニング・コンペンセーションが支払われた)。あの時も仕掛け人はスベン・ミスリンタートだった(現在シュツットガルトのSD。ドルトムントではチーフスカウトだった)。