球体とリズムBACK NUMBER
「マンチェスターの強者」は今や“ユナイテッドではなくシティ”の証明…FA杯ダービー決勝生取材でペップから聞いたホンネの「エモーショナル」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byNurPhoto/Getty Images
posted2023/06/06 17:00
ゴールに大喜びするギュンドガン。今や「最強のマンチェスター」はユナイテッドではなくシティとなっている
『BBC RADIO1』のDJがロックやダンスミュージックでスタジアムを温め、両チームの選手たちもウォーミングアップを始める。ボールを自由に扱う控え選手のなかで、もっとも技術が際立っていたのはフィル・フォデン、コール・パーマー、リコ・ルイスのシティのアカデミー出身者たち。そんなところからも、シティというクラブのプロジェクトの深さが垣間見えた。
前半1-1も試合をコントロールしたのはシティだった
シティOBのマーク・サマービーとユナイテッドのアレックス・ファーガソン元監督が試合球を運び、王室楽団が行進し、ウィリアム王子が整列した選手たちと握手を交わして、ついにキックオフ。すると13秒後に、いきなりスコアが動いた。
シティの右前方へフィードが入ると、空中での競り合いのこぼれ球がペナルティアークへ落ちる。これをイルカイ・ギュンドアンがそのまま右足のハーフボレーで捉えると、動けないGKダビド・デヘアの左側にボールは吸い込まれていった。
ユナイテッドもこれで浮足だったりはしなかったが、やはりその後も試合をコントロールしたのはシティだった。セントラルMF兼CBのジョン・ストーンズの位置取りによって、3バックにも4バックにも自在に変化するシステムを用い、リズミカルにボールを回す。低めの中盤以下の5人は誰もが屈強かつスピーディで、その上に高い技術まで備えている。攻撃はフォーメーションの突端に構えるアーリング・ハーランドがくさびになったり、彼を囲む4人のテクニシャンがあらゆるエリアからチャンスを作ろうとする。
ところが30分にアーロン・ワン=ビサカが右サイドから頭で折り返したボールを、ジャック・グリーリッシュが手で触ったことがVARで確認され、ユナイテッドがPKを獲得。これをブルーノ・フェルナンデスが落ち着いて左に流し込み、前半は1-1のドローで終了した。
ペップが語った「特別にエモーショナル」
それでも後半も引き続きシティが主導権を握り、50分過ぎに右サイドでFKを得る。ここからケビン・デブライネがチップ気味のボールを送ると、ギュンドアンが今度は左足のボレーを合わせ、デヘアの右を抜いた。以降は最終ラインを4枚にして、終盤にはジャック・グリーリッシュをネイサン・アケーに交代させる守備的な選択もして、きっちりと2冠を達成した。