いいモノを吸収し、いい投手を打つため時間をかけ自然にグラデーションされていった。右足を軸にした狭いスタンス、左足をスッと上げる絶妙のタイミング、ヒッチ気味に始動し内外へ巧みに振り分けるバットコントロール。とくに今季は真っすぐに屹立し、軸がぶれず、体勢を崩されることなくバットが出ているように感じられる。

ヒッチ動作（バットを上下に動かす動作）から繰り出される巧みなバットコントロール　©Nane Suzuki

「そうですね。結果を求めすぎると軸回転で打てなくなったり、自分のスイングができなくなるのはわかっているので、あまり欲を出さずにプレーすることを心掛けています」

プーさんの作戦

　微細な感覚が肝心な言語化しづらい打撃フォームではあるが、宮﨑は自分のフィーリングをノートに書き留めており、調子が悪くなると映像を見ながら感覚をすり合わせている。現状はアジャストしているという感じなのだろうか。

「そうですね。実はシーズン入ってから良くない時期もあったんですけど、今は自分のスイングが戻りつつありますね」

　たしかに5月後半、ヒットが止まった時期はあったが、それでもこれだけの数字を残しているのだから、さすがと言うしかない。ゾーンを外れる低めのボールに対しては意識せずとも自然とバットは止まる。そして甘く入ってきたボールはしっかりと仕留め、かつカウント球を見逃さずヒットにしている。

「打席の中でしっかりとプランを立てているのもあると思います。相手投手のいいボールであったり、自分に対してこういう攻め方をしてくるだろうということをコーチやアナリストに相談して挑んでいますからね。パーセンテージの少ない球種への対応も含め、しっかり作戦を練りながらやっていますし、それが結果として出ればいいなって」

宮﨑の見えている世界は常識外にある

　今季の宮﨑のバッティングで印象的だったのは、5月4日の広島戦（横浜スタジアム）で、自身6年ぶりとなるサヨナラホームランを打ったシーンだ。打球は風に乗りライトスタンドへ消えていった。宮﨑はこの一打に関し「シンプルに振り遅れです」と、苦笑しながら語っている。思い出したのは、元々広角に打てるバッターではあるが、右方向へのファウルが調子の良さのバロメーターになっていることだ。あまり聞いたことがない話だったので記憶に残っている。

【次ページ】　もうケガをしちゃうと長引いてしまう歳なので（笑）