ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
DeNA宮﨑敏郎34歳に聞いた、打率4割&1000試合出場「最近言われて気づいた(笑)」…個人記録を気にしない“ハマのプーさん”の話
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNanae Suzuki
posted2023/06/05 11:03
5月下旬まで“4割打者”となっていた宮﨑敏郎。“ハマのプーさん”として親しまれるヒットメーカーに「4割」「1000試合出場」について聞くと…
そんな頼りになるバットマンは6月1日の楽天戦(楽天モバイルパーク)で、NPB通算1000試合出場を達成した。2012年にDeNA体制となってからドラフト入団した選手としては初の到達者である。
そういえば昨年9月に1000本安打を記録したとき、「達成感はありますか?」と訊くと、「いや、あまり感じないです(笑)」と言っていた宮﨑だが、果たして今回はどんな感じなのだろうか。
「いや、最近言われて気づいたような感じなんですよね」
そう言うと、また笑った。いい意味で、記録や数字に執着を持たない男である。
「ただ本当、支えてくれた人たちには感謝したいです。この世界で、ここまでできるなんて夢にも思っていませんでしたからね。我慢強く試合で使ってもらうことでここまで来られたので、今後も結果を出して恩返しをしていきたいなって」
プーさんのターニングポイント
“生涯横浜”を誓っている宮﨑は、静かにそう語った。
10年以上に及ぶキャリア、今日を迎えるにあたりターニングポイントになった試合はどれなのだろうか?
宮﨑は「うーん……」と唸りながら熟考すると、2015年7月8日の広島戦(三次)を挙げた。まだファームが主戦場だった宮﨑は、ケガをした石川雄洋に代わってこの日一軍登録され、7番・セカンドとして試合に出場している。
「場所は地方球場だったんですけど、不思議と吹っ切れたような1日だったっていうのを鮮明に覚えていますね」
宮﨑は4打数1安打1得点でチームの勝利に貢献をした。
「即スタメンでしたし、絶対に結果を出さなきゃいけないって。やるしかないと割り切ったというか、逆に失うものはないという感じで臨んでいた記憶がありますね」
社会人出身の入団3年目という安閑とできない立場。決して猶予があるわけではなく、そろそろチャンスをモノにしなければいけなかった。宮﨑はこの後、シーズン終了間近まで一軍に帯同され、打率.289と結果を残した。
3割打ちたいって気持ちはあるけど…
そして翌年就任したアレックス・ラミレス監督に打撃センスを見出されレギュラーへ抜擢されると、2017年には首位打者のタイトルを獲得している。
「だからあそこがスタートだったかもしれませんね」
どこか遠くを見つめるように宮﨑は言った。