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球数減らして大進化! カープ九里亜蓮の投球を激変させた藤井コーチのある言葉と「ゾーンで勝負する」投球術

posted2023/06/05 11:00

 
球数減らして大進化! カープ九里亜蓮の投球を激変させた藤井コーチのある言葉と「ゾーンで勝負する」投球術<Number Web> photograph by JIJI PRESS

プロ10年目にしてキャリアハイの成績を狙わんばかりの九里。その表情は明るい

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 目に見えない変化が、目に見える成長に結びつくことがある。今年、プロ10年目の広島カープ・九里亜蓮の投球が大きく変わった。

 5月31日、チームが2018年から勝てずに13連敗を喫していたオリックス戦の負の歴史に終止符を打った。7回に秋山翔吾の値千金の決勝3ランが飛び出すまで無得点に抑えるなど、7回1失点で勝ち投手となった。

 今季ここまで4勝2敗、防御率2.03。2021年に最多勝を受賞し、先発の柱を担ってきた投手のひとりとして、大きな驚きを与えるような成績ではないかもしれない。ただ、その投球内容には明らかな変化がある。

 それは1人の打者に要する球数だ。2021年は打者1人に対して平均3.8球だったのが、昨季は平均4球を要した。それが今季は平均3.5球で終えている。

 平均4球以上要した試合数は2021年が6試合、昨季は約2倍の13試合あった。対して今季は、自身初登板となった4月4日の阪神戦しかない。

 4回1/3でマウンドを降り、打者22人に87球、4安打6四球で4失点。この登板が分岐点となった。

 次回登板に向けて調整する中、九里は藤井彰人ヘッドコーチに呼ばれた。

フルハウスピッチャーからの脱却

「いろんな球種を投げられるのに、自分で自分を苦しくしてしまっているんじゃないか。打者はストライクを先行されると嫌だぞ」

 根拠のない励ましではない。カウント別の被打率やストライクが先行したときの成績など裏付けされたデータを揃えてのアドバイスだった。そしてなにより、昨季まで阪神のバッテリーコーチとして九里と対戦していた視点が大きな説得力を持っていた。

 フルカウントの状況をつくることが多い「フルハウスピッチャー」からの脱却を、第一歩とした。

 九里はシュートとシンカーのように変化するツーシームを軸に投球を組み立てる。闘志むき出しの豪快なイメージもあるが、実は技巧派タイプだ。ほかにもカットボールやスライダーという曲がり球に加え、カーブやチェンジアップのような球速差のある球種にフォークも操る。

 ただ、これまでの九里は、直球系の球で押す投球スタイルを追い求めているように見えた。

【次ページ】 わずかな変化で得た大きな成果

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