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今季“大ブレイク”DeNA関根大気は何が変わった? 本人が語る“メキシコでの知られざる苦闘”「ファンからの言葉にすごく考えさせられて…」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/05/22 11:01
今季、打率3割を大きく上回り、主軸といえる働きを見せる関根。覚醒した感があるが、本人に話を聞くと…
「そうですね。それだけいっぱい失敗できますからね。失敗をいっぱい書き出して、それをしないようにすることで、今の自分が作り上げられている。だからまず1打席あれば、それはすべてだし、いいことなんですよ」
関根は頷きながら、どこか謎かけのようなことを言った。
「例えば、その1打席で凡退しても、紐解いていけば、確率が悪くなった理由がわかりますし、次はそれをしなければいいよねって次の打席に向け確率を上げることができる。テクニカルや心情、そのときの脳みそを分析することができれば、次の打席は確実にプラスになるはずですから」
これぞまさに「いい面を探しつづけながら生きる」ということなのだろう。
やっぱり過信しないということ
プロ10年目、この6月で28歳になる。若いときから関根の取材をしてきているが、キャリアを重ねるたび無駄がそぎ落とされ、確固たる自分が形成されてきている。その一方で考え方に柔軟性も増し、心身ともにバランスが良くなっている。そんな年輪を感じるからこそ、急に覚醒したようには思えないのだ。想起するのは、老子の『足るを知る』という言葉である。
そう伝えると関根は納得した表情で「やっぱり過信しないということですよね」と言った。
「自分のやりたいことを求められる世界ではなく、求められたことを体現することができて初めて認められる世界。自分に与えられた役割をいかにやることができるのか。例えば若いときは、“自分はこうなりたい!”って理想に任せてやっていたこともありましたけど、でもそうじゃなくても今は自分に喜びを生むことができるし、人にも喜んでもらえることを知りましたからね。結局今、いいバランスでやれているのも若いとき極端に振り切ってやった結果ですし、すべてがいい経験になっているんですよ」
そう語ると関根は、爽やかな笑顔を見せてくれた。
まだまだ先の長いペナントレース。5月17日の広島戦(横浜スタジアム)からチームの懸案事項だったとおぼしき2番に関根は抜擢された。考えることの多い打順だが、三浦大輔監督からは「変わらず、いつものようにプレーしてくれ」と言われており、野球センスと状況判断に長けた関根ならば、きっとその務めを果たしてくれることだろう。
25年ぶりのリーグ優勝・日本一へのキーマンへ――野球を心から楽しみながら躍動する関根から今後も目が離せない。