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「エフフォーリアとの涙を糧に」横山武史が語った最良パートナー引退と”ダービーのドン底”「敗れた瞬間がフラッシュバックすることも…」
text by
藤井真俊(東京スポーツ)Masatoshi Fujii
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/05/18 17:39
デビュー7年目にしてすでにG1で6勝をあげている横山武史騎手
向正面から3コーナーをむかえても位置取りは後方のまま。それどころか4コーナーでは後方2番手までポジションが下がっていた。
「仕掛けのタイミングは馬のリズムが9割、展開の読みが1割くらいのバランスで考えていましたが、それにしても行きっぷりは良くなかったですね(苦笑)。原因は馬場だったと思います。こなしてはくれましたが、決して走りやすそうではなかったので。京成杯と比べても進みが悪かったです。さすがに3コーナーあたりから徐々に仕掛けていきましたが、そこでも反応は微妙。ようやくエンジンが掛かったのは4コーナーから直線にかけてでした」
「僕が一番ビックリしましたよ(笑)。想像以上」
しかし、そこからの伸び脚は圧巻だった。鞍上の左ステッキに応えてグングンと加速すると、大外から直線一気の差し切り勝ち。残り50m付近で先頭に立ってから、最後は流す余裕すらあった。レースの上がり3F37秒2に対して、ソールオリエンス自身の上がりは35秒5。上がり2位タイの3着ファントムシーフが36秒4だから、まさに“他馬が止まって見える”ような極上の切れ味だった。
「見ている方たちもビックリしたでしょうけど、僕が一番ビックリしましたよ(笑)。想像以上でしたね。もちろんペースが速くて展開がハマった面もあり、より一層強く見えた部分もあると思うんですが、それにしてもなかなか差せるようなポジションではなかったので。改めてすごい馬だと思いました」
自分を見つめ直した暗中模索の日々
レース後の勝利騎手インタビューでは、喜びを爆発させる一方で「普段からたくさんいい馬に乗せてもらっているのにもかかわらず、去年はGIで全然いい成績を残せなかったので……。自分自身“何が足りないのだろう”と毎日、毎日研究していました」と、一昨年のキラーアビリティで勝ったホープフルSを最後にGI勝利から遠ざかっていたことへの苦悩も語っていた。
「自分には何が足りないのだろうと、乗り方やトレーニングなどを見つめ直す日々でした。昨年の夏には英国のシャーガーカップに招待して頂き、海外で乗る機会もあったので、外国人ジョッキーと自分では何が違うのかもずいぶん考えました。生まれ持った骨格や体型の違いは仕方がないですが、馬の抱え方や引っ張り方は真似できる部分がありますからね。
そういうことを試すにあたって、また足りない部分をトレーニングしたりして……。単に馬を引っ張るといっても、様々な方法がありますし、そういう体の使い方などもたくさん工夫しました。もちろんこれはあくまで一例ですし、他にも色々あるんですけど、それは企業秘密です(笑)」