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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「野茂に何かがある」メジャー戦力外の予兆…15年前、なぜ野茂英雄は“ひっそりと引退”を選んだのか「すでにロッカーは空っぽだった」
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byJIJI PRESS
posted2023/05/18 11:03
「空白の2年間」を経て、3年ぶりにメジャー昇格を果たした野茂英雄。2度目の登板も打たれ、4失点で降板した
同ヤンキース戦で3点を追う7回から2番手で登板し、3回を投げた。7回と9回の最後の打者はいずれもメジャー6年目の松井秀喜で、1度目の打席はレフトフライ、2度目は空振り三振に退けたが、最後の9回にアレックス・ロドリゲス、ホルヘ・ポサダという2人の強打者にソロ本塁打を浴び、3回を4安打2失点、2四球1三振。球数は3回で65球にも及んでいた。
今まで通りにマウンドに上がりました
9回に続投しなければ2回無失点で上々の復帰戦となったはずだったことから、ヒルマン監督はこのとき、続投させたことを少し後悔したようだった。だが「9回に入る前にカラダ、ダイジョウブデスカと日本語で聞いたら、大丈夫だと言った。本当ですかと聞いたらイエスと答えたので、彼を信じた」という。試合後の野茂は淡々としていた。
「今まで通りにマウンドに上がりました。何も考えていなかったです。自分はどこまでやれるかわからないですし、使う方もどこまでやれるかわからないでしょうし、投げるチャンスがくれば抑えて、それからですかね」
記者が見た「現役最後の登板」
2度目の登板は4月15日の敵地でのマリナーズ戦で、このときはイチローを空振り三振に切って取ったが、1回を3安打4失点、2四球1三振と崩れた。その次に登板したのが、4月18日の敵地でのアスレチックス戦。8回2死から5番手で登板し、いきなり二塁打、さらに単打、最後に3ラン本塁打を浴び、ようやく最後の1人から空振り三振を奪って16球でその回を終え、チームは2-13で大敗した。
それが野茂の現役最後の登板だった。あまりにボロボロの内容だった。
試合後の野茂は、静まり返った重苦しい雰囲気のクラブハウスの中でも、いつも通り囲みの取材を受けた。