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東大生はなぜ“監督未経験のJリーガー”にオファーを出したのか?「陵平さんにはプロの監督になって活躍してもらいたい」の真意
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2023/05/12 17:02
東大就任3年目を迎えた林陵平監督。現役引退後、最初にもらったオファーは自身も驚いたという東大生からの依頼だった
スポンサー営業は5年前からスタート。当初は協賛する企業が1社の状態だったことを考えれば、飛躍的に伸びている。営業先はOBのツテで紹介してもらうことも多いという。プロモーションユニットの営業力は目を見張る。ただお願いするだけではない。東大の価値を理解した上で生かせるものは生かし、資金を出す企業側へのリターンをしっかり提示している。
「1つはブランディング。東大のユニホームにバナーを付けることで、企業のイメージアップにつながればと思っています。この仕組みはプロクラブと同じです。ただ、僕たちの場合、メディア露出などは少なく、それだけでは弱い。そこで考えたのが、リクルーティング。就職活動している東大生へ積極的にスポンサー企業を紹介し、こちらから少しでも良い人材を送り込めるようにサポートします。SNSなどを活用して東大生に新鮮な情報を届けることもあれば、ア式蹴球部の部員向けに企業説明会を開くこともあります。互いにとってメリットがないと、長続きはしないと思いますから」(八代)
売り手市場の就職活動戦線を考えると、企業側にも十分なメリットはありそうだ。
なぜ「未来への投資」に注力する?
予算確保に力を入れるのは、「今」を充実させるためだけではない。将来的には関東大学リーグ定着を目指しており、中長期的な強化にも目を向ける。
未来への投資は惜しまない。毎年、冬の時期になると、『リクルートユニット』が中心となり、全国の進学校を集めてサッカーフェスティバルを開催。ア式蹴球部の魅力を伝え、高校生たちへの認知度を高めている。目ぼしい選手がいれば勧誘もする。ただ、受験をクリアしてもらうのが大前提となる。スポーツ推薦制度がないため、できることは勉強のアドバイスなど。昨今では県立富山中部高校(富山)、県立高松高校(香川)といった地方の高校を招待し、幅広く広報している。
八代自身も麻布中・高校時代に同フェスティバルに参加し、ア式蹴球部に憧れを抱くようになったという。そして現在、『リクルートユニット』に関わり、率先して活動している。
「今後、僕よりももっとうまくて、強い選手が入ってくれれば、うれしいですね。自分が何か残したものが、礎になればいいな、と思っています。僕自身、ア式に入りたくて、東大に来たようなものです。強豪校の出身者はいなくても、ピッチ内外であらゆる努力を重ねて、レベルの高い大学サッカー界のなかでジャイアント・キリングを起こしてやろうという気概を持っています。僕はこんな組織が好きなんです」