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東大生はなぜ“監督未経験のJリーガー”にオファーを出したのか?「陵平さんにはプロの監督になって活躍してもらいたい」の真意
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2023/05/12 17:02
東大就任3年目を迎えた林陵平監督。現役引退後、最初にもらったオファーは自身も驚いたという東大生からの依頼だった
最終学年を迎えている八代キャプテンはすでに総合商社の内定を得ており、来春には卒業予定。プレーヤーとして、サッカーに全力で打ち込むのも今シーズンが最後だという。チームの守備を支える主力として、ラストイヤーに懸ける思いは強い。
今季は東京・神奈川1部リーグで3位以内に入り、今季から新設された関東大学3部へのリーグ参入プレーオフに進むことを目指している。
「今年、最大のミッション。関東大学リーグに昇格できれば、有能な選手たちも集まってくれると思います。強い組織をつくっていくためのステップになるはずです」
合言葉は『関東昇格』。1977年に関東大学2部リーグ(当時は2部制)から降格して以降、一度も戻っていない舞台である。
林監督も信頼する20人の分析ユニット
熱い思いを持って取り組むのは、ピッチで戦う選手だけに限らない。分析班としてチームを支える『テクニカルユニット』のスタッフたちも目の色を変え、目標達成のために心血を注ぐ。約20人で構成されるユニットを4グループに分け、毎週のように対戦相手をスカウティング。時には深夜まで相手の傾向、弱点を洗い出す。東大の授業や課題があるなかでも、5時間以上かけて試合映像を編集することも珍しくない。
努力を重ね、1浪の末に赤門をくぐった集中力は並大抵ではない。ユニット長の高橋駿平(経済学部3年)は「(勉強の)持久力はあると思います」と笑う。
ミーティングでは林監督の要望通り、選手たちへのプレゼンテーションは15分にまとめる。要領を得た分析はJリーグの実情を知る林監督が「プロの監督になれば、呼びたいくらい」と認めるほど質が高い。パソコン画面に向かう真剣な目は、選手たちと同じである。
「今年、どうしても関東に昇格させたい。リーグの実力が拮抗しているからこそ、テクニカルユニットに求められるものは大きいと思っています。僕らが勝利にどれくらい貢献したのかは、数字では測れないですが、自分の中で納得していれば、それでいいのかなと。チームの勝利が一番のモチベーションです」(高橋)