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“あの人は、東大監督の枠に収まる器ではない” 監督3年目・林陵平(36歳)は秀才集団をどう惹きつけた?「“元プロだから”は通用しない」
posted2023/05/12 17:01
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Yuki Suenaga
欧州サッカーを中心に解説者としても活躍する元Jリーガー・林監督は、自らのルーツとは正反対の道のりを歩んできた秀才集団をどうまとめ上げているのか。その奮闘を記録する。【全2回の1回目/#2へ】
現在、引く手あまたのサッカー解説者・林陵平氏は東京大学ア式蹴球部の監督も務めており、寝る間を惜しんで両方の仕事に情熱を注いでいる。2、3時間しか寝ない日も珍しくない。
「睡眠時間が短くても、僕は平気ですね。解説者として話すことは監督業に活きますし、監督として戦術的な構造を学ぶことは解説業にも役立っています」
快活な口調で話す言葉には充実感がにじむ。
1日のスケジュールは多忙を極める。たとえば4月27日の木曜日。日本時間の午前4時にキックオフしたアーセナル対マンチェスター・シティを『SPOTV』で解説。その後、午前6時半から1時間半の仮眠を取り、すぐさま浜松町から赤坂へ移動し、午前9時半頃から午後1時まで『DAZN』でレギュラー解説を務めるJリーグプレビューショーの収録に参加。ひと仕事を終えて体を休めると、午後6時頃には電車で東大の本郷地区キャンパスへ。週末に開催される東京・神奈川1部リーグ(関東1部から数えて4部相当)の試合に向けてのミーティングを行い、午後7時からグラウンドで笛を吹く。
指導風景からは、ハードスケジュールをこなしていることは微塵も感じさせない。きびきびと動き回り、身振り手振りで技術指導もする。元プロとはいえ、今も筋トレを欠かさないという186cmの引き締まった体は、誰よりもたくましく見えた。
「いつ寝ているんだろう」選手も心配?
早朝から林氏が解説するプレミアリーグの天王山を見ていたキャプテンの八代快(法学部4年)は、眠い目をこすりながらあらためて感心したという。
「本当にいつ寝ているんだろう、と思います。(4月27日の)解説していた前日の夜も、東大で指導していたんですよ。いつも練習も試合も欠かさずに来て、解説業で得た知見を僕らに動画で見せてくれることもあります。監督業に対しても、自身のアップデートを欠かしていません」