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オリンピックへの道BACK NUMBER
高橋と村元は自然と目を合わせ…“かなだい”引退会見で見えた“2人の信頼関係”「これ以上の最高のパートナーはいない」「僕から哉中ちゃんに…」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/05/05 17:00
2人そろって引退会見をおこなった村元哉中(かな)と高橋大輔の通称“かなだい”ペア。2人の会見での様子から築き上げてきたものが感じ取られた
「引退するということを伝えたのは僕からの方で」
高橋が切り出す。
「引退を伝えた時期なんですけど、実は(2月の)四大陸選手権の後に哉中ちゃんの方にお伝えしました」
村元「まったくびっくりはしなくて」
村元は「まったくびっくりはしなくて」とそのときを振り返る。
「大ちゃんから理由と、今シーズンをもって引退するという話を聞いたときに、私も結成当初、まずは2年スタート、というところから始めていたので、いつ大ちゃんから引退するって聞いてもそれは覚悟していました」
高橋が伝えた理由として最も大きかったのは右膝の状態だった。
高橋が会見で明かしたのは、ときに歩けなくなるときがあったこと、練習もままならず計画通りに進められないほど状態がよくなかったことだった。
ごめん。今日は滑れない
パートナーである村元は、当然、そうした日々を目の当たりにしてきた。
「ずっとそばにいて、隣で見ていたんですけど、ときには歩けなかったり、練習が無理だったり。一応氷には乗るんですけど『ごめん。今日は滑れない』とか。本人がいちばんやりたいけど、できないという葛藤とか、ほんとうに大変だったと思います」
だからこそ、競技から離れる決断にも驚きはしなかった。
村元は当時の心情をこう明かす。
「たまに膝を貸してあげたいぐらいの気持ちでした」
労いの、あたたかな心情が言葉には込められ表情や眼差しにも労りの気持ちがあらわれていた。
このときだけではない。冒頭の挨拶の場面から、自分が話している間にときに相手に目を向け、あるいは話を聞いている間はうなずくように目を向ける。お互いが自然と視線を交わし合う様子から、言葉には容易に表せない、思いやりや敬意、信頼ある関係ならではのリズムや呼吸の一致がうかがえた。
自分よりチームを前に置けるか
「身体がちゃんとしてもメンタルだったり、気持ちの面で同じ向きを向いていないとなると続けることも難しくなります」
高橋が言えば、村元はこう続ける。