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三笘薫25歳の“先発落ち”は温存だった「あの日、絶望的に暗かったロッカールーム」ブライトンの難しい現実「選手年俸61億円はリーグ19位」
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byAFLO
posted2023/05/04 17:09
4月29日のウルブス戦、約5カ月半ぶりに国内リーグの先発メンバーから外れた三笘薫
三笘はローテーション制を採用した監督の考えを尊重し、納得していた。6−0で大勝したチームの勝利にも喜んでいたが、しかし、取材エリアで満足感に浸ることはなかった。彼の言葉からは、どこか複雑な思いを抱いている様子が伝わってきた。
理由はいくつかあるように思えた。三笘が「他の選手は出ていますし」と話したように、右MFのソリー・マーチは先発出場を果たしている。三笘、カイセド、マクアリステルの主力3人を休ませ、次節のマンチェスター・U戦をフレッシュな状態で臨ませたいという監督の考えに理解を示す一方で、三笘はチームの中心的存在になりたいと常日頃から語っている。当然、本心はこの試合も先発で出たかったのだろう。
「絶望的に暗かった」ロッカールーム
もうひとつの理由が、その3日前に行われた前節ノッティンガム・フォレスト戦にあった。
ブライトンは、ノッティンガム・フォレストに1−3でまさかの逆転負けを喫した。来季の欧州チャンピオンズリーグ出場を諦めていない彼らにとって、下位の相手に不覚を取ったのはあまりに痛い。しかも、敗退が決まったFA杯セミファイナル直後の試合でもあった。試合前日の会見でデゼルビ監督は「ノッティンガム・フォレスト戦は、今季のブライトンで最も重要な一戦」と意気込んでいたが、ブライトンは黒星を喫してしまった。
三笘個人に目を向けても悔いの残る内容だった。決定的なチャンスをモノにできなかったからだ。
前半こそ左サイドからドリブル突破で幾度となくチャンスを築き、マッチアップしたニコ・ウィリアムズを圧倒し続けた。前半の出来から考えれば、ブライトンの勝利は固いように思えた。
ところが、後半にターニングポイントが訪れる。1−1で迎えた後半13分、ブライトンはカウンターから三笘に決定的なチャンスが巡ってきた。GKと1対1のチャンスを掴みながら、三笘のシュートは枠を捉えきれず、ゴールポストの外側をかすめていった。
ここから、試合の流れはホームのノッティンガム・フォレストに傾いた。三笘の好機逸から約10分後、中盤底のカイセドが普段ならありえないボールロストを犯し、カウンターを受けたブライトンは逆転弾を許した。結局、1−3で敗戦――。試合後のロッカールームは雰囲気が絶望的に暗く、フラストレーションに満ちていたという。
ノッティンガム・フォレスト戦後、取材エリアで三笘は静かにこう話した。