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「1年後には世界ランカーに入っても…」那須川天心”目”はすでに超一流! 元世界王者・飯田覚士が見たボクサー天心の可能性…不安要素は?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/04/28 17:14
ボクシングデビュー戦で日本ランク2位の与那覇勇気(右)を攻守で圧倒し判定勝ちを収めた那須川天心。ボクサー那須川の可能性について、元世界チャンピオンの飯田覚士氏が徹底分析した
「キックは3分×3ラウンドで、この試合は6ラウンド。本人にもし不安材料があるとしたら、絶対にここだと思うんです。本人または帝拳ジム側とすれば、無理してでも倒すよりもどう(体力を)配分していくかという戦い方を選んだのではないかな、と。パンチにありったけのパワーを乗せて打つ、イコール、消耗も増えていきます。打ち合う場面もあったとはいえ、僕の目からはそこに思い切りエネルギーを注いでいるようには見えませんでした。
あとはボクシングの体にまだなっていない。キックで使っていた筋肉を落として、太腿とか臀部周りとか下半身の力を吸い上げてパンチ力につながるような筋肉をつけていくのはきっとこれから。(パンチ力のことを)今の段階で言うのは難しい気がしますね」
1年後は世界ランカーに入ってもおかしくない
見る力においては高いレベルを示したものの、ここにも課題がないわけではない。飯田が言葉を続ける。
「フィジカルが疲れると、目も比例して疲れます。ずっと打ち合って6ラウンドをやり切るとなると、そこはまだ本人にとっても不安要素なのではないでしょうか。この試合を見ても、小休止みたいな時間をちょっとつくってみたりしていましたから。僕は“目のスタミナ”と呼んでいますが、トレーニングや実戦を重ねていくことでそれがついていけばハイレベルにある彼の見る力がもっと活きてくるはず。順調にトレーニングを積み、しっかりと試合をこなしていけば、1年後には世界ランカーのレベルに入っていてもおかしくないとは思います」
キックから転向した那須川のテンポやリズムは独特ではある。だが、世界チャンピオンクラスで重なるボクサーがいるとすれば、飯田は“ネクストモンスター”と称される元WBO世界フライ級王者で24戦全勝18KOのサウスポー、中谷潤人の名前を挙げる。
「距離の取り方に似ているところを感じるし、長い距離では相手の正面に立たずにジャブの付け方もちょっとずつずらしていくとか、はぐらかしながらフックで引っ掛けるとか、ストレートでカウンターを取るところとか、いくつか重なりますよね。いざ(中に)入られたときにどう対処するかっていうのは今回見えなかった部分ではあるんですけど、中谷選手はここもうまいし、強い。那須川選手がこの点でも重なってくると、対戦相手にとっては厄介極まりないボクサーになってくるでしょうね」
次戦は夏に8回戦が予定されているという。スーパーバンタム級を主戦場とするなら、スーパーバンタム級の日本ランカーあたりが候補になってくるだろう。今後、日本チャンピオンクラス、そして世界ランカーと戦うと考えたら、ボクシングに完全アジャストしていくべく、一歩一歩積み上げていくことが肝要になる。
飯田も認める目の力。那須川がボクサーとしても“視界良好”であることは間違いないようだ。
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