- #1
- #2
核心にシュートを!BACK NUMBER
なぜ長谷部誠39歳は「引退確率99%」から“欧州17年目の現役”を選んだか…「悔しさの中に喜びがあった」心に火をつけた“CL出番なし”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byYusuke Mimura
posted2023/04/12 17:20
3月の長谷部誠の会見。現役続行とフランクフルトでの日本のスクール事業についての発表だった
「グループリーグで負けてしまったのは、すごく悔しいです。この舞台に立ってみて、正直、全然やれると思ったし。
だから、もっと、もっと、こういう舞台でやっていきたいです。悔しさは残りますね。前回と今日の試合と、2回もグループリーグ突破を自分たちで決めるチャンスがあったので。大きなチャンスを逃して、すごく失望感はあります。やはり、また、この舞台に立って、今度は決勝トーナメントに行きたいです」
当時のドイツ王者ボルフスブルクの一員として臨んだときに置き忘れた宿題と、悔しさ。それを今シーズンは晴らしてみせた。
ナポリとの大一番で出番は巡ってこなかった
それなのに……。
決勝トーナメント1回戦、セリエA優勝をほぼ確実なものにしているSSCナポリとのホーム&アウェーの2試合。そこで長谷部はピッチに立つ機会を与えられなかった。そして、チームもそこで敗れてしまった。
しかも、昨秋のケガから本格復帰した長谷部は年明けから先発として高いパフォーマンスを披露していた。リベロの位置でチームに落ち着きをもたらし、第19節のヘルタ・ベルリン戦などでは守備だけではなく、攻撃でも最後尾から輝きを放っていた。
しかし――。
ナポリ戦を2試合後に控えたケルン戦でのことだった。この試合でも長谷部は存在感を立ち上がりから発揮しており、後半の47分には、そこまでの長谷部のパス成功率95%、デュエル勝率80%という脅威のデータを国際映像が紹介したほどだった。
しかし、71分のケルンのロングカウンターの対応中に、長谷部は足を滑らせて転倒してしまった。そして、フランクフルトはそこから2失点目を喫してしまい、勝敗が決した。これをグラスナー監督がどのように判断したのかは公にはなっていないが、あのシーンの影響がなかったといえば嘘になるだろう。その後のナポリとの2試合では、地元メディアが長谷部のスタメン起用を予想しながら、出場機会は訪れず、今シーズンのCLでの戦いも終わってしまった。
長谷部はこう振り返る。
「ナポリとの試合で、2試合ともピッチに立てなかった。その中で、チームが敗れてしまった……というところで、やはり、『二重の悔しさ』がありました」
「悔しさを自分が感じたことに『喜び』を感じた」
ただし、13年前のように悔しさに震えていただけではない。39歳で、プロとして22度目のシーズンを迎えている長谷部の中に芽生えてきたのは、悔しさとは対照的な感情だった。
「悔しさを自分が感じたことに『喜び』を感じたのです」