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新生・ドイツ代表は何が変わった? 再起のベルギー戦「過去最低の出来」もファンが示したのは、ブーイングではなかった<監督は続投> 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/04/11 09:00

新生・ドイツ代表は何が変わった? 再起のベルギー戦「過去最低の出来」もファンが示したのは、ブーイングではなかった<監督は続投><Number Web> photograph by JIJI PRESS

3月下旬、ペルー戦は勝利も、真価が試される再起戦シリーズ2戦目としてベルギーに2-3で敗れたドイツ。W杯時から続投のフリック監督が語ったのは…

「私はこれまで数多くのドイツ代表の試合を見てきたが、この試合における30分までのドイツ代表は過去最低の出来だった。誰も競り合いにも行かず、ベルギーに自由にプレーをさせていた。0-2とされて当たり前のパフォーマンスだ!」

これまでなら、罵声に包み込まれた。でも…

 今度の仕切り直しも上手くいかないのか。そんな虚脱感にも襲われそうになる。ただ、この日の代表戦は何かが違った。これまでの代表戦だったらブーイングのオンパレードで、スタジアムは罵声に包み込まれていたことだろう。でもスタジアムを訪れたファンからの熱い声援がそこにはあったのだ。

 ケルンで開催されたこのベルギー戦前にファンからのメッセージがあった。ゴール裏に白色と黄色と黒色で示された《意志》というコレオグラフィーが出現し、横断幕がそこにつながる。

意志が成功へと導く

「意志が成功へと導く。2024新しい夏の物語へさあ行こう!」

 かつて90年代に元イングランド代表FWガリー・リネカーが「サッカーはとてもシンプルなスポーツだ。22人の選手が90分間ボールを追いかけ最後はドイツが勝つ」と言い放ちたくなるほど憎たらしくも強いのがドイツのドイツたるゆえんだったはず。

 あふれんばかりの闘争心、どんな試合でも全力でプレーする気骨、ギリギリのところまで粘り強く戦う決意、妥協することなく相手の良さを消していく徹底さがドイツの強さだった。そしてそんな戦う姿勢をファンは求めている。

 だから、意志を示さなければならない。フリックは前半30分過ぎにこの日ベンチスタートだったジャンを出場させ、中盤の構成を修正することでようやく落ち着きを取り戻すことができた。ジャンが激しいチャージでボールを奪い取ると、ファンからは大歓声。選手はユニフォームを汚し、身体を張ったプレーが増えていく。少しずつ調子を取り戻していくドイツにファンがさらに声援を送る。

フリック監督が口にしたファンへの感謝

 ドイツ代表のファン離れが進んでいると問題視されてきた。代表戦を行ってもスタジアムが満員にならない。「代表戦はもう熱狂できない」と語る人もいる。でも、みんながみんなドイツ代表を見限ったわけではない。「苦しい時だからこそ、僕らファンが支える存在になろうじゃないか」というファンもたくさんいるのだ。

【次ページ】 ファンの思いとプレーが一体となっていた

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