バレーボールPRESSBACK NUMBER
「デカっ!」石川祐希が2mのフランス代表より大きく見えるのはなぜ? 初公開イタリア自炊生活「トマト、食べられるようになっちゃったんですよ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2023/04/07 11:04
イタリアに渡ってから早8シーズン目を迎える石川祐希。強くなるためにストイックな食生活を送ってきた
「基本的に僕の好き嫌いは“味”だけなんです。トマトも味が嫌で、今までは手を出さなかったんですけど、栄養士さんからはリコピンやビタミンCが摂れるから食べたほうがいい、と言われ続けてきたので、だったら食べたほうがいいよな、と。最初はスープに入れて食べ始めるようにしたらだんだん慣れてきて、トマトが入ったサラダを食べてみたら意外といけるじゃん、と思うようになって。今はむしろ、積極的に(トマトを)摂るようになりました」
好き嫌いがなくなった。それだけならば「へー、そうなんだ」で終わる話だが、続けて聞くと、実に石川らしい理由があった。
「苦手って、基本的にマイナスじゃないですか。好き嫌いがなくなればあとは必要なものを摂ってプラスにするだけだし、たとえばそれをプレーに置き換えたら、苦手なプレーをなくせばそれも強みになって、そこからはいいことを極めるしかない。いいところを伸ばすのも1つの考え方ですけど、苦手なものをなくしていくことも、強くなるために必要なんじゃないか、って思うんです」
トマトをバレーボールに置き換えて考えてみた。石川が課題を問われるたび、多く挙げてきたのがサーブレシーブだ。
突き詰めた“狙われる”サーブレシーブ
相手からすれば、サーブレシーブをしてから攻撃に入る石川を、できる限り万全な体勢で打たせたくはない。そのため際どいコースを狙われ、ターゲットにされることが多く、サービスエースを献上することもあったのは確かだ。
トマトと異なり、もともと苦手意識があったわけではない。だがもしも石川と同じ攻撃力を持った選手がいて、その選手のほうがサーブレシーブでも上回れば後者を起用する確率が上がる。
ならば練習を重ねて直接失点を減らすのみ、と繰り返しサーブレシーブの練習に努めた。そしてその結果として、この1、2年もサーブの威力は増し続ける中、明らかにサービスエースを献上する数は軽減した。
やると決めたら徹底してやる。自分に厳しく、周りにも厳しく。それこそが、日本代表でもミラノでも石川が君臨する所以でもある。
「こっち(イタリア)の選手は食事も生活も適当。それこそタバコを吸う選手もいるし、お酒も飲みます。そのわりに『最近ちょっと太ってきたんだよね』とか言うんです。それだけ好きなものだけ食べたらそうなるだろ、と思うんですけど(笑)、僕には関係ないので何も言わない。でも1人の選手として見たら、もったいないなって思いますよね。あと、同じぐらい自分にはチャンスが増えるからラッキーだな、とも思う。僕より背が高い選手が、僕と同じような生活をしたら正直勝負するのはきついですから」
着実にステップアップを遂げ、掲げた目標をクリアしてきた。傍目には軽々乗り越えてきたように見えるが、8シーズンに渡って世界最高峰のリーグで戦い続けることは決して楽な道のりではない。家族や友人と簡単に会うこともかなわず、電話ひとつするにも時差がある場所で、1人、黙々と――。
「犠牲は払いますよね。でも、受け止め方は人それぞれ違う。僕はやると決めたらやりきる。もっとうまくなりたいし、強くなりたいから、身体にも気を遣う。そこはずっとブレないです」