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「デカっ!」石川祐希が2mのフランス代表より大きく見えるのはなぜ? 初公開イタリア自炊生活「トマト、食べられるようになっちゃったんですよ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2023/04/07 11:04
イタリアに渡ってから早8シーズン目を迎える石川祐希。強くなるためにストイックな食生活を送ってきた
アンダーカテゴリーからトップのシニア代表へ。日本の大学からイタリア・セリエAへ。ステージが変われば求められることも変わる。それは当然ながら身体も然り。より激しく、強く動き続け、なおかつケガのリスクを減らすべく重ねてきた結果は着実に身になっていると石川は言う。
「ただ(身体が)大きくなっただけじゃなく、食事から徹することで余分な脂肪が増えずにスムーズに、最短で求める身体、大きさに成長できているのを実感します。栄養指導とか食事の改善って言葉だけ聞くと結構きつく感じる人もいますけど、基本的に僕は『こうなりたいならこうしたほうがいいよ』と言われて、自分もそうしたほうがいいと思えばできちゃうタイプなんです。そもそも僕の場合、ストレスになるのはおいしいものが食べられないことじゃなく、栄養がしっかり摂れないことなので、極端な話、毎日同じメニューでもきついと感じることはないです」
「トマト、食べられるようになっちゃったんですよ」
その例えが決して大げさではないことは、実際のメニューを聞けばわかる。毎日の食事メニューはほぼパターン化していて、朝食はごはんと目玉焼き、フルーツとヨーグルトに冷凍しておいたサラダチキンを解凍したもの。昼食はチームのレストランに行き、基本はパスタと肉か魚のメイン料理を選び、夕食はごはんと野菜が多く入ったスープに、肉か魚を焼いたものを加えて食べる。ごはんの量は当然、目分量ではなく、炊飯器の隣にクッキングスケールを置いて必ず計測するのがルーティーン。
味付けも塩コショウでシンプルなものばかりなので、お世辞にも「おいしい」と噛みしめながら食べるわけではない。だが必要な栄養素は摂れる。何より大切なのは「バランス」だ。
「レパートリーは限られますけど、いろんな食材を摂るようにと言われているので、野菜もフルーツもいろんなものを食べるようにしています。バナナ、キウイ、ゴールドキウイ、ブルーベリー、ラズベリー、パイナップル、イチゴ、マンゴー。フルーツって調理しないで食べられるし、ビタミンが豊富だから便利なんですよね。本当は植物性たんぱく質、納豆とか摂りたいですけどイタリアではなかなか難しい。現実的にはプロテインで補うことが多くなりますが、遠征時の昼ご飯に豆があったら摂るようにしています」
料理男子と言うには遠く及ばない。「好きでやっているわけではない」と苦笑いを浮かべるように、必要に駆られて続けている自炊生活。でも、野菜を切り、肉を炒める手際はよく、キッチンに立つ姿も板についてきた。
さらにもう1つ、大きな変化があったと、したり顔で明かす。
「トマト、食べられるようになっちゃったんですよ」
食への意識が高い石川にとって、数少ない難敵がトマトだった。いかに克服したのか。