猛牛のささやきBACK NUMBER
大谷翔平が最後のマウンドへ…ブルペンの宇田川優希が見た景色とは? 大谷に学んだ“パスタは塩だけ”「ダルさんにガッカリされないように」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byGetty Images
posted2023/03/30 11:04
大谷翔平と記念撮影する宇田川優希(24歳)。最後のマウンドに向かった16番の“後ろ姿”が記憶に刻まれた
WBCでは、1次ラウンド韓国戦の7回と、チェコ戦の4回2死一塁の場面でマウンドに上がり、打者4人に対し無安打3三振と完璧な投球を見せたが、マイアミで行われた準決勝、決勝では登板機会はなかった。
宇田川の役割はイニング途中からの救援だった。準決勝以降も、ブルペンで何度も肩を作りその時に備えたが、マウンドに上がる機会はないまま終わった。
WBCでブルペン担当コーチを務めたオリックスの厚澤和幸投手コーチは、帰国直後の記者会見でこう語った。
「一つ心残りは、準決勝決勝で“宇田川ジャパン”の宇田川をマウンドに上げることができなかったこと。(宇田川会の)会長がマウンドで飛躍する姿をお披露目できなかったのが残念でした。ただ今回、あのブルペンで一番バックアップに回ってくれて、彼には、ゲームではないところで陰で支えてもらったので、本当に感謝したいと思います」
オリックスに合流した厚澤コーチは、そのねぎらいの意味をこう明かした。
「宇田川にしか!できないんです」
「投手陣の役割というのを、栗山(英樹)監督、吉井(理人)投手コーチとの中で決めていて、回の途中からは宇田川と伊藤大海(日本ハム)、湯浅京己(阪神)の3人しか行かさないと決めていました。そうでないとブルペンが混乱してしまうので。決勝に関しては、伊藤はあの回(6回)に行くのが決まっていて、湯浅はダルビッシュ、大谷のバックアップについていた。残る宇田川には、伊藤が投げるまでの5回、全部バックアップについてもらったんです。
『ピッチャーがあんなにいるのに、宇田川1人にやらせて』と思うかもしれないですけど、宇田川にしか!できないんです、あそこは。僕の勝手な判断ですけど。やっぱり昨年そこの修羅場をくぐっているので。(一軍経験自体は)少ないですけど、やっぱりランナーを置いての場面は、場数を踏んだ宇田川を、信頼していました。だから決勝でも、あと1人(相手の打者が)つないだら行くよ、というところまでいった場面もありました。結果的にマウンドに立っているピッチャーが断ち切って、チェンジになったので出番はなかったんですけど」
昨シーズン終盤の優勝争いやCS、日本シリーズで、幾度もチームのピンチを救った宇田川の姿を間近で見ていた厚澤コーチだからこその信頼だった。