甲子園の風BACK NUMBER

スカウト「センバツで最も評価している打者」だが…なぜドラフト候補スラッガー真鍋慧(広陵)は「自分で自分を苦しめた」と語ったか 

text by

間淳

間淳Jun Aida

PROFILE

photograph byJIJI PRESS

posted2023/03/29 06:00

スカウト「センバツで最も評価している打者」だが…なぜドラフト候補スラッガー真鍋慧(広陵)は「自分で自分を苦しめた」と語ったか<Number Web> photograph by JIJI PRESS

今回のセンバツで最も注目されているスラッガー真鍋慧。二松学舎大付属戦ではタイムリーヒットを放っている

 真鍋選手は緩い球を呼び込んで、逆方向へ弾き返す打撃練習を広陵に入学した時から続けている。吉田投手を攻略するイメージを描いて打席に入ったはずだったが、聖地で打ちたい気持ち、勝ちたい思いが先行してしまった。

 第3打席はフォアボールを選び、第4打席は絶好の場面で回ってきた。1点を勝ち越して、なおも2アウト一、三塁。1本出れば、相手に大きなダメージを与えられる。しかし、真鍋選手は海星の2番手・髙野颯波(そな)投手が投じた内角低めの直球に手が出ず、見逃し三振に倒れた。

「自分の実力のなさ」と語るがスカウトは…

 この試合、真鍋選手は凡退した3打席全てで初球のストライクを見逃している。第1打席はキャッチャーが構えた外角とは逆球となった125キロの内寄り直球。第2打席は、内角から真ん中に入ってくるスライダー。第4打席は内角に寄ったキャッチャーの構えとは反対、シュート回転した外寄り129キロの直球だった。いずれも投手にとってはコントロールミスで、真鍋選手には悔いが残った。

「初球の甘い球を見逃して、自分で自分を苦しめてしまいました。自分の実力のなさ、準備不足です」

 試合に勝利した後のインタビューとは思えないほど、表情は暗い。身長189センチ、体重90キロの大きな体を終始丸めて、自身の打席を振り返った。チームに貢献できなかった申し訳なさでいっぱいだった真鍋選手。ただ、プロの目には、昨年のセンバツからの成長が映っている。プロ野球のスカウトの1人は、こう話す。

「スイングスピードが速く、スイングまでの動きがシンプルになったので、1年前よりポイントが近くなりました。投球を長く見ることができているので、変化球の見極めができるようになっています」

 主軸を担った昨年も高校生とは思えない長打力を誇っていたが、左投手のスライダーや右投手のチェンジアップのような外角へ逃げたり落ちたりする球にもろさがあったという。海星戦はノーヒットに終わったものの、変化球の見逃し方は悪くなかったと指摘する。第1、2打席の凡退にも「球を待ちきれずに体が少し前に出てしまいましたが、技術的な問題ではなく力みです。今大会で最も評価している打者であることは変わりないです」と語った。

スカウトが称えた“1つのタイムリーヒット”とは

 今春のセンバツで、真鍋選手の進化を感じたのは二松学舎大付属(東京)戦の第3、4打席だという。真鍋選手は3打席目で2アウト三塁から、外角高めの直球をレフトに弾き返した。4打席目はフルカウントから外角低めに沈むチェンジアップをバットの先で拾ってライトへ運んだ。スカウトは言う。

【次ページ】 スカウトが称えた“1つのタイムリーヒット”とは

BACK 1 2 3 NEXT
真鍋慧
広陵高校
専大松戸高校
平野大地

高校野球の前後の記事

ページトップ