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「オータニがクローザーかよ。何てこった」WBC決勝“ハリウッド級シーン”を体感「トラウトの会釈に大谷翔平は」「勝者は日本だが…」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byDaniel Shirey/Getty Images
posted2023/03/26 11:03
伝説となったWBC日米決戦。会場のローンデポ・パークはどんな感じだった?
大谷は、先頭の9番マクニール(メッツ)を四球で歩かせてしまう。地元観衆から凄まじい歓声が上がり、再び「U、S、A」コール。この試合で最も緊迫した状況を迎えた。なぜなら、1番ベッツ(ドジャース)、2番トラウト(エンゼルス)、3番ゴールドシュミット(カージナルス)というアメリカ打線の中核につながるからだ。
しかし、大谷はベッツにセカンド正面のゴロを打たせ、日本の守備陣が併殺を完成。瞬く間に二死無走者となった。
「トラウトが大谷に軽く会釈しました。これに対して…」
これで、盛り上がっていた反撃ムードが一気にしぼんだ。
「二死となり、大谷はエンゼルスのチームメイトであるトラウトを迎えました。大谷は日本の、トラウトはアメリカのキャプテンでもあります。打席に入る前、トラウトが大谷へ向けて軽く会釈しました。これに対し、大谷は「絶対打たせない」という気迫に満ちた表情を見せました」(試合を中継した「フォックス・スポーツ」)。
「初球は88マイル(約142km)のスライダーだったが、外角低めに外れた。2球目はど真ん中の100マイル(約161km)の低い速球だったが、トラウトは空振り。次も100マイルの速球だったが、アウトサイドへ外れた。4球目は、真ん中高めの100マイルの速球。トラウトは空振り。続いて102マイル(約164km)の速球だったが、外角低めへ外れてフルカウント。6球目、大谷は87マイル(約140km)の鋭く曲がるスライダー。トラウトのバットは空を切った」(スポーツ専門紙「スポーツ・イラストレイテッド」電子版)
大歓声の中、大谷はマウンドを三塁側へ下りながら、両手を大きく広げる。何やら叫びながらグラブを、続いて帽子を宙へ放り投げた。中村悠平捕手と抱き合い、そこへ日本の選手たちが一斉に飛びついてきた。
「MLB史上、最高の打者の一人であるトラウトに対し、2球をど真ん中に投げながら3度空振りさせた。大谷は、これまで我々が見てきた他のいかなる選手とも違うことを改めて証明した」(スポーツ・イラストレイテッド)。
「もしあなたが驚いていないなら、驚いてしかるべきだ。トラウトはこれまでのキャリアで、6174回打席に立ち、3回とも空振りをして三振したのは24回(約0.39%)だけ」(アメリカの野球データ分析会社「コディファイ」)。
アメリカにとっても大谷翔平は奇跡のような存在
アメリカ人にとって、そして世界中の野球ファンにとって、大谷翔平は奇跡のような存在だ。MLBの公式サイトは「大谷は我々を驚かせ続ける」として、「OPS(出塁率と長打率の和)1.345、打率.435、ホームラン1、打点8」という打者としての成績を左に「投球回数9回3分の2、失点2、奪三振11、セーブ1」という投手としての成績を右に示して脱帽した。