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「本当は戦力になりたかった…」侍ジャパン歓喜の瞬間を無人のマツダスタジアムで迎えた栗林良吏が今季に期する思い

posted2023/03/25 11:02

 
「本当は戦力になりたかった…」侍ジャパン歓喜の瞬間を無人のマツダスタジアムで迎えた栗林良吏が今季に期する思い<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

3月6日、強化試合の阪神戦が、栗林にとって日本代表としての最後の登板となった

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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Naoya Sanuki

 ナイター照明に照らされたローンデポ・パークのマウンドに大谷翔平が上がったとき、栗林良吏は真っ青な空の下でマツダスタジアムのマウンドに立っていた。チームは遠征中で、練習参加はわずか6人。スタンドはもちろん無人。あの熱狂とは対照的に、ミット音が鳴り響く静かな投球練習だった。

「(意識は)しましたよ。モチベーションを上げて、今日のブルペンに入ろうと思ったので、自分が(WBC決勝の)9回のマウンドにいると思って練習しました」

 侍ジャパンのWBC決勝進出が決まり、広島球団は決勝戦当日の練習後に代表取材を設定した。予定時間になると、栗林はユニホームから「たっちゃんTシャツ」に着替えて姿を見せた。気丈に振る舞い、ときにはユーモアをまじえて報道陣を笑わせる。いつもと変わらない姿に、真の強さを感じた。

 昨年末から調整を前倒しし、1月からブルペン入り。春季キャンプでは練習の合間にも右手でWBC球を握り、ブルペン投球を含めて試行錯誤しながら適応してきた。

 プロ入りから2年で球界を代表するストッパーとなり、2021年の東京五輪では日本の守護神として金メダル獲得に貢献した。より高みを求めるアスリートの本能か、WBCでの代表選出が発表されてからは、いつも淡々と語る栗林には珍しく闘争心を言葉にすることもあった。

 侍ジャパンの合宿に参加すると、ダルビッシュ有(パドレス)のリーダーシップにも助けられ、人見知りながらすぐにチームに溶け込むことができた。投手陣を中心に会話を重ね、チームとしての結束が高まっていくのを肌と心で感じていた。

栗山監督の決断

 強い決意を持って臨んだ3月9日、1次ラウンド初戦の中国戦で思わぬアクシデントに見舞われた。登板に向けたルーティンの中で、腰に違和感を感じた。登板は回避せざるを得なかった。イレギュラーな環境が招いたアクシデントにも、栗林は冷静に先を見ていた。

「準々決勝には投げられるようにと。自分は、そこに投げるつもりでいた」

 腰の状態は徐々に回復。1次ラウンド最終戦の12日にはブルペン投球を再開した。準々決勝では戦力になる——。だが、その願いは叶わなかった。

【次ページ】 悔しさと、嬉しさと

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