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大谷超え10打点&三振ゼロ「さすが吉田正尚」な成績に「ヒーローインタビューはまだ?」の声…ラスト2試合“熱い男”に期待すること 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2023/03/20 11:02

大谷超え10打点&三振ゼロ「さすが吉田正尚」な成績に「ヒーローインタビューはまだ?」の声…ラスト2試合“熱い男”に期待すること<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

決戦の地・マイアミで調整を続ける吉田正尚。準々決勝イタリア戦で到達した10打点は、今大会トップの数字である(3月19日時点)

 これまでも、純粋な憧れや、やりたいという気持ちに正直に行動してきた。

 思い出されるのが、プロ1年目のオフの出来事だ。吉田は毎年オフに、ハンマー投げのアテネ五輪金メダリストで、現在はスポーツ庁長官を務める室伏広治氏のもとでトレーニングを行い、独自のトレーニング方法や理論を吸収してきたが、きっかけは、プロ1年目に吉田が送った一通の、熱烈な手紙だった。

 子供の頃に観たテレビ番組「筋肉番付」で、当時現役選手だった室伏氏が、パワーだけでなくスピードでも他のアスリートを圧倒する姿に衝撃を受け、憧れた。自身がプロになり、様々なトレーニング動画を検索するうちに室伏氏が編み出したトレーニングが目に留まり、体感したいという思いが募って、1年目の秋季キャンプ中に手紙をしたためたのだ。高知のホテルの部屋で何度も書き直し、誤字脱字がないかなどを知人にもチェックしてもらい、意を決して投函した。

 指導を快諾した室伏氏は、「便箋にびっしりと文字が書かれていて、本当に一生懸命な、熱意が伝わる手紙でした」と心を打たれていた。

 当時、吉田はこう語っていた。

「送ってよかったなと。ただ思うだけでは何も起きないので、しっかり行動に移せたのはよかったです。自分の性格かもしれないけど、やっぱりやりたいと思ったことは、行動にしないと」

 きっとその時と同じだ。吉田にとってはシンプルなことなのだろう。やりたいから、やる。挑戦したいから、挑戦する。メジャーも、WBCも。

 一途な思いでつかんだその舞台に立つ吉田の表情やプレーには、充実感があふれている。目指す世界一まで、あと2試合。

 日の丸のユニフォームを身にまとう最後の打席も、きっと「さすが吉田正尚」な打撃で締めくくってくれそうな気がする。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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