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17歳の日本人ピッチャーが最強アメリカに快投…「何点でも取れる」日本野球を見下すベーブ・ルースを驚かせた“沢村栄治の伝説” 

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太田俊明

太田俊明Toshiaki Ota

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photograph byBUNGEISHUNJU

posted2023/03/19 11:00

17歳の日本人ピッチャーが最強アメリカに快投…「何点でも取れる」日本野球を見下すベーブ・ルースを驚かせた“沢村栄治の伝説”<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

「日本プロ野球が始まった日」。それは沢村栄治が最強・アメリカチームと対した試合だった(写真はイメージ)

 では、大リーグオールスターチームを抑え込んだ沢村の球は、どのくらい速かったのか。ある目撃者の証言「金田正一(国鉄・巨人)や江川卓(巨人)よりはるかに速かった」から160キロを超えていたとする説。はたまた「戦前の他の一流投手の映像では、せいぜい130キロ。沢村もそれくらいだろう」とする説。

 この議論については2015年、沢村が公式戦で全力投球する映像が発見され、ついに決着がついた。この映像を解析した中京大学スポーツ科学部の湯浅景元教授によれば、この時の沢村の投球は150キロ台後半のスピードが出ていたという(NHK-BS スポーツ酒場“語り亭”「幻の“日本シリーズ”伝説の選手たち」2015年10月4日放送)。

 また、同番組内で沢村の投球フォームを初めて見たゲストの金田正一は、感想を聞かれて「天才」と評している。傑出した投手だったことは間違いないだろう。

チャンピオン・山本由伸と比較

 さて、いよいよ当企画の現チャンピオン山本由伸(オリックス)と沢村栄治の勝負である。

 沢村のベストシーズンは、昭和12(1937)年の春(当時は春と秋の2シーズン制)。

 実は、沢村がプロ野球で満足に投げられたのは昭和11(1936)年と12年の2年間しかない。昭和13年1月に、20歳にして最初の徴兵で中国戦線に出征したからだ。

 二人のベストシーズンの比較は、以下のようになる(赤字はリーグ最高、太字は生涯自己最高)。

【沢村】登板30、完投24、完封7、勝敗24-4、勝率.857、投球回244、被安打138、与四球68、奪三振196、防御率0.81、WHIP0.84

【山本】登板26、完投6、完封4、勝敗18-5、勝率.783、投球回193.2、被安打124、与四球40、奪三振206、防御率1.39、WHIP0.85

 沢村はこの年、最多勝、最高勝率、最多奪三振、最優秀防御率の投手4冠を達成した最初のプロ野球投手になり、このシーズンから制定されたMVPの初受賞者になった。

【次ページ】 沢村栄治の最期

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