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17歳の日本人ピッチャーが最強アメリカに快投…「何点でも取れる」日本野球を見下すベーブ・ルースを驚かせた“沢村栄治の伝説” 

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太田俊明

太田俊明Toshiaki Ota

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photograph byBUNGEISHUNJU

posted2023/03/19 11:00

17歳の日本人ピッチャーが最強アメリカに快投…「何点でも取れる」日本野球を見下すベーブ・ルースを驚かせた“沢村栄治の伝説”<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

「日本プロ野球が始まった日」。それは沢村栄治が最強・アメリカチームと対した試合だった(写真はイメージ)

 チームの3番打者ベーブ・ルース(ヤンキース)は、通算714本塁打、生涯打率.342の史上最強打者。4番のルー・ゲーリッグ(ヤンキース)は、来日年の3冠王で2130試合連続出場のアメリカの英雄。5番のジミー・フォックス(アスレチックス)は来日前年の3冠王で、2年連続MVP。現在でも大リーグ史上最強の右打者の一人と言われている。この3人を含めて2番から6番までの5人がのちに野球殿堂入りするという最強メンバーだった。いわば、現在行われている第5回WBCの全選手のオールスターのようなチームと、戦前の日本のアマチュアチームが試合をしたのだから結果は見えている。

 長い船旅で調整不足ながら開幕6戦全勝。調子が上向いてきた第7戦は14対0、第8戦15対6、第9戦21対4と強力打線が爆発し、チームの主砲ベーブ・ルースは「取ろうと思えば何点でも取れる」と全日本軍を完全に見下ろしていた。

 こうして迎えた第10戦、静岡草薙球場の全日本軍のマウンドに立ったのが、17歳の沢村栄治だった。

沢村の衝撃…「日本プロ野球が始まった日」

 この試合で沢村は、1回の2番から2回の5番まで、ルース、ゲーリッグ、フォックスのクリーンナップを含む殿堂入り打者4人を連続三振。6回まで2安打7奪三振無失点に抑える快投を見せたが、7回に4番ゲーリッグにカーブを本塁打され、結局0対1で敗れた。

 これまで全日本の投手陣を完膚なきまでに打ち込んできた全米打線を被安打5、奪三振9、四球1、失点1に抑えた17歳の少年投手の快投に日本中が沸き立ち、“この日から日本のプロ野球が始まった”とさえ言われている。

【次ページ】 チャンピオン・山本由伸と比較

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