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センバツ“入場行進曲”はいつからヒット曲に? 戦前は軍歌→YouTube再生数も考慮…毎日新聞&編曲家に直撃「どんな曲でも行進曲にできる」
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byJIJI PRESS
posted2023/03/18 06:00
センバツの入場曲はいつからヒット曲を使うようになったのか。また、どのような過程で選ばれているのだろうか
「毎年、自由闊達に議論を交わしていますので、全員の意見が一致する方が珍しいかもしれません。『その年や前年の流行歌から若者向けの曲』という基準がありますが、近年では年長者がほとんど聴いたことがないような『若者向け』の曲も増えていますので、行進曲としての親しみやすさについて、議論が白熱することは少なくありません。可能な限り、大会の主役である高校生が気持ちよく行進できる曲を選べるよう、心がけています」(濱氏)
前述のとおり、複数のヒットチャートで配信による視聴数を把握するとともに、「YouTubeでの再生数などで傾向をつかむようにしている」といい、かつての「オリコンランキング」のような、1つの指標だけで状況を理解することは不可能といえるだろう。
90年代後半、札幌のFMラジオ局に勤務していた筆者は、常にヒットチャートを把握しておくことが仕事の1つだったが、当時はまさに「オリコンランキング」に目を通しておく程度。現在のようにサブスク配信サービスやYouTubeの再生回数、TikTok、CDの売上など、さまざまなデータにアンテナを張り巡らせておくのは、さぞかし大変なことと思う。
ちなみに、現在は毎日新聞社事業部の20代女性が、入場行進曲を担当しているという。
どんな曲でも行進曲に編曲できる
開会式で演奏する吹奏楽版の編曲を毎回担当しているのは、作曲家・編曲家の酒井格氏。「どんな曲でも行進曲に編曲できる」と酒井氏は言うが、「落ち着いた雰囲気の曲や、ゆったりした曲、演歌は選ばない」など、選曲するうえで意識していることはあるのだろうか。
「多くの人が知っている曲や、特に選手の多くに親しまれているアーティストや曲を選べるよう努力し、担当者も日頃からアンテナを張り巡らしています。酒井格さんの『どんな曲でも行進曲に編曲できる』というスキルに全幅の信頼を置いて、短調や3拍子の曲であっても最初から排除せず、議論の際に幅広い選択肢を作れるようにしています。