甲子園の風BACK NUMBER
センバツ“入場行進曲”はいつからヒット曲に? 戦前は軍歌→YouTube再生数も考慮…毎日新聞&編曲家に直撃「どんな曲でも行進曲にできる」
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byJIJI PRESS
posted2023/03/18 06:00
センバツの入場曲はいつからヒット曲を使うようになったのか。また、どのような過程で選ばれているのだろうか
具体例を挙げれば、2010年第82回大会の『My Best Of My Life』(Superfly)などは、行進曲としてかなり意外な選曲だったのではないでしょうか? 曲のジャンルに関しても、先入観は持たないようにしたいと思っています。マリナーズ時代のイチローさんが、登場曲に『天城越え』を選ばれたように、演歌が登場する可能性もゼロではないと想像します」(濱氏)
コロナ禍で、「この数年甲子園球場には行けなかった」という酒井氏も、今大会は久々に現地で観戦する予定だ。「吹奏楽で使われている楽器の、それぞれの魅力を最大限に引き出せるよう心がけて編曲した」という入場行進曲『アイラブユー』を、「球児たちが全力でプレイ出来ることを願いながら聴きたい」という。
行進曲→いまも応援曲…人気のナゼ
筆者は『ブラバン甲子園大研究』(文春文庫)やさまざまな記事で、高校野球の吹奏楽部応援を研究・執筆しているが、歴代の入場行進曲に選ばれた曲の中で、応援曲として現在もっとも演奏されているのが、1989年の『パラダイス銀河』(光GENJI)だ。伝説のアイドルグループの、大ヒットした曲ということもあるが、個人的には、快活なテンポでノリがよく、ポジティブな曲調と、サビ部分が16小節で収まるという点がリピートしやすく、応援向きだったのではないかと考えている。なぜ今も多くの球児たちに愛されているのだろうか。
「詳細に検討したことはありませんが、ご指摘の内容に同意いたします。大阪事業本部長の私見を申せば、行進曲の選定基準に『高校野球の行進曲として好ましくない表現が含まれていないか』を含んでいるように、ヒット曲は曲調のみならず歌詞も含めて親しまれるものです。『ようこそここへ 遊ぼうよパラダイス』という曲頭の歌詞が、憧れの舞台である甲子園球場で試合に臨む選手たちの心情を反映している、という側面もあるのではないかと思っています」(濱氏)
今大会から、声出し応援の解禁、アルプススタンドの吹奏楽部の上限人数が撤廃されるなど、例年通りの音楽と応援が帰ってくる。
back numberの『アイラブユー』で、青空のもとはつらつと入場する選手たちにエールを送りながら、平穏な日常が戻ってきた喜びをあらためて噛み締めたいと思う。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。