イタリア球界は変革期にある。

　不遇の地で連綿とベースボール文化を耕してきた矜持のあるイタリアは、なまじ歴史があるために自分たちが育てた代表を送り込めないというジレンマを抱えている。

　アテネ五輪の頃までは、北米移民の子孫を大量に帰化させる北欧や東欧といった新興国の安易な代表強化策を忌避する矜持があった。しかし21世紀の少年たちは、地元のクラブではなく、SNSでダイレクトにメジャーリーグを夢見ている。

“イタリアの皮をかぶったアメリカBチーム”である

15日の練習で、ヌートバーと肩を組むイタリアのブレット・サリバン。彼もまたアメリカを主戦場とする　©Getty Images

　16日に侍ジャパンが対戦するのは、“イタリアの皮をかぶったアメリカBチーム”だ。

「日本とのゲームがかなり難しいものになるのは覚悟している。だが、我々もやる気で高揚しているんだ」（ピアザ代表監督）

　勝負を分けるのは技術面の差より、チーム力としての完成度ではないか。大番狂わせを起こす確率は、少なくとも、0.1パーセントではないだろう。

　様々な背景を持つイタリアだが、現地で野球をプレーした記憶は――素朴な人々たちの思い出ばかりだった。
＜#2「イタリア野球を絶対好きになる話」につづく＞