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WBCイタリアの現地リアル人気…「地上波放送なし」「ピアザはとんでもないペテン師」なぜ8強なのに“嫌われた監督”状態なのか 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2023/03/16 17:00

WBCイタリアの現地リアル人気…「地上波放送なし」「ピアザはとんでもないペテン師」なぜ8強なのに“嫌われた監督”状態なのか<Number Web> photograph by Kyodo News

前日練習でダルビッシュ有と話すピアザ監督。なぜ現地イタリアで“嫌われた監督”になってしまったのか

 1952年には代表チームが初めて結成され、翌年にはCONI(イタリア五輪委員会)からベースボールが団体競技として正式に承認された。

 国内での人気はサッカーやバスケ、バレーボールに遠く及ばなくとも、1954年に開催された第1回欧州選手権で優勝したことはイタリアの野球人たちの自尊心を大いに高めた。国際大会への出場を重ねながらアマ球界における発言力をつけ、パルマ出身の名伯楽アルド・ノタリが90年代にIBAF(国際野球連盟)会長として名声を得た。

 セリエAを頂点とする国内リーグと代表チームは、2023年の現在に至るまで、辺境の地に連綿とベースボール文化を根付かせたようと腐心し続けてきたことは間違いない。

なぜ「ピアザはとんでもないペテン師」と批判されるのか

 だが、WBCに臨むイタリア代表には、どうしても“辺境国としてのジレンマ”がつきまとう。13年大会以来の8強進出を果たしたチームに、国内から「この代表は恥だ」「ピアザはとんでもないペテン師」という手厳しい批判が飛び交うのにはいくつか理由がある。

 一つは、連盟が2月9日に発表したロースター30人中、イタリア国内でプレーするセリエA組がたった4人しかいないことだ。

 2006年の第1回大会にプレーヤーとして参加したマイク・ピアザが、2019年秋に代表監督に就任して最初に手をつけた仕事は、イタリアにルーツを持つ“北米プレーヤーたち”に片っ端から電話をかけることだった(大谷翔平のエンゼルスでの同僚であるデビッドと、ドミニクのフレッチャー兄弟もしかりである)。

 祖先の出自をもつ国での出場を促す大会ルールに従い、WBC向けに特化したチームを編成したまで、と理由はつけられるが、これでは国内セリエA組が面白いはずがない。

 イタリア球界がタイトル獲得に強いこだわりをもつ欧州選手権での中心は国内組であり、生まれも育ちもアメリカ大陸でイタリア語も話せない“WBC代表”が、選手からもファンからも身近な存在に感じてもらえないのは無理からぬ事だ。言語の壁があるとはいえ――日本野球への憧れを幼少期から持ち、今や侍ジャパンの人気者となったラーズ・ヌートバーとは対照的とも言える。

 NY生まれながらイタリアのパスポートを取得し、70~80年代にかけて数々のセリエA優勝とイタリア代表歴を誇る元外野手サルヴァトーレ・ヴァッリアーレは、「アメリカ社会ではイタリア人呼ばわりされて、イタリアでは外国人扱いだった」と、選手の立場からも板挟みの居心地の悪さを回顧している。

サッカー界からもピアザ批判が飛んでくるワケ

さらに、ピアザ監督への批判はサッカー界からも飛んでくる。

【次ページ】 WBCの地上波放送がない中でYouTube配信は…

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