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近藤健介“じつは一般入試組だった”横浜高時代「将来は料理人になりたい」あの名物コーチ・同級生が明かす“それでも天才だった”話
posted2023/03/14 11:04
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph by
Naoya Sanuki
「アイツはね、期待されていないよ。実力からしたら(活躍は)無理。じゃあなんでメンバーに選ばれたのかって? 要するにね、ピッチャーの狙い球とか、打ち方の修正点とか、仲間に聞かれたときにアドバイスができるヤツなんだよ。高校時代もコーチの代わりのようなことができていた。そこを栗山(英樹)監督は買ったんだろうね」
横浜高校野球部などで部長、コーチを40年以上務め、60人近くの選手をプロに送り出した小倉清一郎(78歳)は、1月6日に発表されたWBC侍ジャパン先行メンバーを見て驚いた。錚々たるメンバー12人の中に、近藤健介の名前があったからだ。「メジャー組が来たらアイツは出れねぇだろうよ!」「そもそも7年50億なんてもらいすぎなんじゃねえのか!?」……と、小倉の代名詞でもある裏表のないべらんめえ口調がさく裂する。
小倉は期待している選手ほど、口調が辛口になる。近藤に関しても同じ。現役時代は一度も褒めたことがなかったと断言する。名将・渡辺元智元監督のとなりで戦術担当として活躍し「アマチュア界の野村克也」と呼ばれた名参謀が「コーチの代わり」と評した選手。近藤健介とはいったいどういう選手なのか。
2つ上に筒香、同期に乙坂
愛称は「コンちゃん」。2011年に春夏甲子園出場を果たした横浜の中心選手で、春のセンバツ時のキャプテン、キャッチャーだ。2学年上に筒香嘉智(レンジャーズ)、1学年下に柳裕也(中日)がいて、同級生には元横浜DeNAベイスターズの乙坂智(米独立リーグ、ヨーク・レボリューション)がいた。全国屈指の強豪校だが甲子園出場は春夏ともに3年ぶり、と久しぶりの出場となった代だった。アメリカ人の父を持つ乙坂の言動がいささかマイペースで、渡辺監督が苦心していた姿をよく覚えている。「外野守備で乙坂がポケットから目薬を出して差したときは、怒るより先に笑ってしまった」などなど。アナログ派の渡辺監督が考えを一新し、選手とのメール交換を始めたのがこの代。個性派ぞろいで9人中下級生5人のチームを背中で引っ張っていたのが近藤だった。