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J1新潟“遅咲きのテクニシャン”がいよいよ覚醒?「プライドが邪魔していた」大物ルーキーだった伊藤涼太郎(25歳)古巣・浦和でなぜ苦悩
posted2023/03/14 11:03
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE
6年ぶりのJ1に帰ってきたアルビレックス新潟は、セレッソ大阪との開幕戦を2-2のドローで切り抜けると、サンフレッチェ広島に2-1、北海道コンサドーレ札幌に2-2、そして第4節の川崎フロンターレ戦では1-0の勝利を飾り、2勝2分けの負けなしスタートを切っている。
好調の要因は毎試合ゴールを重ねる攻撃陣だ。その中で、ひときわ存在感を放っているのが、正確な足元の技術を誇るテクニシャン、伊藤涼太郎(25歳)である。
相手の狙いを見透かしたようなファーストタッチに切れ味鋭いターン。ボールを奪おうと寄せればそれを嘲笑うかのようなダブルタッチでかわし、一瞬でも間が空けば意表を突いたパスやドリブル突破を仕掛ける。加えて強烈なミドルシュートも得意と、プレーの選択肢は実に多彩だ。相手にとっては脅威でしかない存在だろう。
開幕からトップ下のポジションに定着した伊藤は、4戦で2ゴール2アシストを記録。新潟が挙げた7ゴールすべてに絡み、まさに“最も旬な男”と言っていい。
だが、“彗星の如く現れた”といったありきたりな表現は伊藤に似つかわしくない。プロ8年目を迎える25歳。Jリーグでは中堅の選手に分類される。いわば「遅咲き」とも言える伊藤は、なぜここまで陽の目を浴びてこなかったのだろうか。
名門・作陽高校出身、大物ルーキーとして浦和へ
岡山県の名門・作陽高校時代から、テクニックや試合を決定づけるラストパス、シュートは際立っており、試合を見れば明らかに1人だけ異質なキレと発想を感じさせていた。
その評判通り、大物高卒ルーキーとして鳴り物入りで浦和レッズに加入。しかし、ここからが茨の道だった。当時、プロの壁にぶつかった苦しさをこう明かしている。
「練習では十分に通用する手応えはあるんです。でも、試合に出られない。ポジション争いにすら割って入れない。自信はあるのに、現実にならない。プロになることってこんなに苦しいんですね」