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アントニオ猪木「アリ戦以上の話題に…」幻に終わったイロモノ企画「猪木vs“食人大統領”アミン」とは何だったのか?“常識破りで規格外”な人間性
posted2023/03/27 17:00
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
東京スポーツ新聞社
「アントニオ猪木に国民栄誉賞を授与させる会」が、アントニオ猪木の肖像権などを管理する株式会社猪木元気工場内で発足。3月7日に両国国技館で行われた「アントニオ猪木お別れの会」開催を機に署名活動がスタートした。
“燃える闘魂”アントニオ猪木といえば、プロレス界の枠を超えた昭和を代表する国民的スーパースターだけに、亡くなる前から関係者やファンの間で「猪木さんに国民栄誉賞を」という声は多かった。
2020年2月20日「アントニオ猪木の喜寿を祝う会」開催前に行われた日本プロレス殿堂会発足会見の席では、長州力が「日本の国民栄誉賞って、なぜアントニオ猪木がもらえないのか、いつも不思議ですね。これほど夢や希望を与えたアントニオ猪木ですから、健在なうちに、そういう話が上がってほしいなと思いますね」と発言。
昨年10月1日に猪木がこの世を去ってからはその声がさらに高まり、愛弟子の藤波辰爾は「あれだけ長い間国民に勇気を与え、影響力を与えた人なんだから、国民栄誉賞にいちばんふさわしいのは猪木さんだと思いますよ」と、繰り返し語っていた。
“一般的な価値観”だけでは計り知れないのがアントニオ猪木
その一方で、熱心なファンの間では「常に世間の偏見と闘ってきた猪木に、いまさら必要ない」という意見や「猪木は国民栄誉賞を超えた存在」といった声もある。
そもそも国民栄誉賞とは規定によると「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えること」を目的とし、その表彰対象は「内閣総理大臣が本表彰の目的に照らして表彰することを適当と認めるもの」という、解釈の幅が広く曖昧なもの。さまざまな意見が出るのも当然だろう。
個人的には国民栄誉賞を受賞したら痛快だが、そういった一般的な価値観だけでは計り知れないのがアントニオ猪木だと思っている。
常に賛否両論を巻き起こし、善悪を超えて世間を驚かせてきた猪木。プロレスの試合に関しても、観客をとことん失望させ暴動騒ぎを誘発したかと思えば、次のビッグマッチでは感動の名勝負をやってのける。その振り幅こそが猪木の悪魔的な魅力であり、いつまでもファンを魅了し続けた要因でもあった。
だからこそ1976年に行われたボクシング世界ヘビー級王者モハメド・アリとの格闘技世界一決定戦のように良い意味で歴史に残っている試合もあれば、もし実現していたら、悪い意味で歴史に名を残してしまっていたのではないかと思われる試合も猪木にはある。その代表的な例がアリ戦の4年後、1979年に実現寸前までいったとされるウガンダのアミン大統領との一戦だ。