格闘技PRESSBACK NUMBER
「目の前で友達が殺されたんだ」クロアチアを背負って戦ったミルコ・クロコップが泣いた日…K-1デビューから撮り続けたカメラマンの証言
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2023/03/05 12:22
2006年9月10日、PRIDE無差別級グランプリ決勝でジョシュ・バーネットに強烈なミドルキックを突き刺すミルコ・クロコップ
2013年、ミルコは母国でK-1の試合を行ない、2014年からはヨーロッパ最大のキックボクシング団体のGlory(グローリー)と契約。日本ではアントニオ猪木氏が率いるIGFでMMAの試合を行ない、同団体のベルトも手に入れた。
2015年4月には再びUFCに参戦。かつてUFCで敗れたゴンザーガと再戦し、8年越しのリベンジを果たした。
2016年からは、日本のRIZINで試合をスタートする。同年12月には8人トーナメントのRIZIN無差別級グランプリに出場。全試合KOでの優勝を成し遂げ健在ぶりを示すと、2017年、2018年も引き続き同団体で試合をして無敗を誇った。最後の試合は、2019年2月のBellator。8年前にUFCで敗れたロイ・ネルソンと再戦し、判定勝利を収めた。
いつかクロアチアで格闘技の話を…
この試合の翌月、練習中に頭痛が続いたミルコは精密検査を受けた。その結果、脳内に微量の出血痕が見つかり、脳卒中という診断を受けSNSで引退を発表した。
私はミルコのデビュー戦から最盛期、そして現役晩年までを撮影してきた。言ってしまえば、同志のような選手のひとりでもある。ミルコの引退を聞いたときはショックだったが、脳の病気なら仕方がない。むしろ、大きな事故になる前に発見されてよかったと思っている。
仕事柄、これまで世界の多くの国を旅してきたが、残念ながらクロアチアには行ったことがない。そこでいつの日かクロアチアに行き、美味しいワインでも飲みながら、ミルコと格闘技の話をしてみたい。ストイックなミルコのことだから、
「お前は何を言っているんだ。そんな昔の話をしてどうするんだ」
と、そっけなくクールに対応するのだろうか。
あるいは、現役を引退したことで性格も丸くなり、一緒に昔話に付き合って大笑いをしてくれるかもしれない。
どちらの彼も、ミルコらしいと言えばミルコらしいのだが。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。