濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「えっ、もうリングに?」「スポンサー広告が…」ぱんちゃん璃奈の“疑問が残るリング復帰”で記者が見た「信じられないくらいの強さ」とは?
posted2023/03/11 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
「えっ、もうリングに上がるんですか? 禊は済んだの?」
あるプロレス会場でのこと。取材仲間との雑談中に「ぱんちゃん璃奈のエキシビションマッチを取材する」と言うと、プロレス記者からそんな反応があった。
やっぱりそうなるよな、と思う。女子キックボクサーのぱんちゃん璃奈は那須川天心vs.武尊のサイン入りポスターを偽造、販売した詐欺容疑で逮捕された。昨年12月5日のことだ。リング復帰は3月5日、主戦場であるキックボクシングイベント『KNOCK OUT』のビッグマッチ(国立代々木競技場第二体育館)。パンチのみのエキシビションマッチだった。公式戦ではないが、リングに戻ってきたことには変わりない。
謝罪会見と“同時に行われた”復帰会見
逮捕からエキシビションまで3カ月。不起訴となったことが明らかになったのは、エキシビション実施後の3月10日だった。上記のプロレス記者のように、この期間そのものが短いと感じる人間は多いだろう。しかも彼女はヒザを負傷し手術を受け、長期欠場中だった。事件がなくても試合はできなかったのだ。
今回のエキシビションがキックなしのルールだったのも、怪我の回復状況によるもの。まだ蹴りを出せないという判断からだ。“最短復帰”が発表されたのは、2月17日の記者会見。KNOCK OUTの宮田充プロデューサーが同席しての会見で、まずぱんちゃんが持つチャンピオンベルトの返上が発表された。いわゆる“謝罪会見”だ。
だが、その会見の場で3月5日のエキシビションと「5月ないし6月」の公式戦復帰予定も発表。大会運営側からのペナルティはないということだった。謝罪会見と同時に復帰会見も行われたという状況だ。
客席からは「おかえり」…エキシビションは“禊”の雰囲気に
3.5代々木大会でのエキシビションは“禊”の雰囲気があるものだった。ぱんちゃんは入場ステージに姿を現すと、深々と一礼。コスチュームは黒一色で、髪型もシンプルなものだ。事件前のように華やかさを演出するようなところはなかった。もちろんこれは本人が意図的にしたことだ。
2分2ラウンドのエキシビションを終えると「KNOCK OUTファンのみなさま、格闘技ファンのみなさま、この度は本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げる。そしてこう続けた。
「許されないことをしてしまい、たくさんの方に悲しい思いをさせてしまったんですけど、私には拳しかありません。不快な思いをさせてしまった格闘技ファンのみなさま、本当にごめんなさい。もう一回、マイナスから頑張らせていただきます」