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侍ジャパン視察のドジャース編成評「日本の投手陣は全プールで一番」…岩村明憲が聞いた“WBC裏話”「栗山監督が気にされていたのは…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2023/03/07 17:01
過去の代表選手たちが語る「王座奪還への提言」とは? 岩村明憲に聞いた
栗山監督から聞かれた「2009年のこと」
――今回はダルビッシュ選手のほか、エンゼルスの大谷翔平選手、レッドソックスの吉田正尚選手。そして、カージナルスのラーズ・ヌートバー選手と、4人のメジャーリーガーが代表に選ばれました(カブスの鈴木誠也選手は怪我のため出場辞退)。第2回大会も、岩村さんをはじめ、イチロー選手、城島健司選手、福留孝介選手、松坂大輔選手と5人いました。この大会では優勝していることからも、世界トップクラスの選手が集結するWBCにおいて、彼らの存在は必要不可欠でしょうか。
「判断基準としては難しいですよね。ただ、僕が合宿を取材させてもらった時に栗山監督から逆に聞かれたのは、09年のWBCのことでした。気にされていたのはポジションのバランスで、あの大会ではピッチャーに大輔君、キャッチャーに城島さん、内野に僕、外野にイチローさん、福留さんと、それぞれにメジャーでプレーする選手がいたんですね。この時はたまたま各ポジションに選手がいましたけど、栗山さんは経験豊富なリーダーとなれる選手を置きたいんだと思います」
――そこが、複数のリーダーを求めている栗山監督の狙いなんですね。
「そうだと思います。今回で言えば、キャッチャーは甲斐(拓也)選手、内野なら山田哲人選手と、プレミア12と東京オリンピックに出場している、国際大会を熟知するふたりにもそういった役割を期待しているはずです」
――メンバー選出において何かと話題にされるのが、母親が日本人のヌートバー選手です。日本プロ野球でのプレー経験がなく、代表に合流したのが大会直前ということもあり、チーム内でのコミュニケーション不足など懸念材料も多いような気がします。
「僕はヌートバー選手の出場は、すごく意味のあることだと思っています。この決断については、栗山監督も『賛否両論があるのは覚悟している』と認めておられましたけど、僕は『100%賛同します』と答えました。なぜかというと、ヌートバー選手が日本代表選手としてWBCでインパクトを残すことによって、今後、日本国籍を有する海外育ちのプレーヤーが選ばれやすくなるからです。
ヌートバー選手の報道を見ていても、日本語や国歌を覚えようとしてくれたり、好きな日本食を話してくれたり、すごく文化に溶け込む姿勢を見せてくれているじゃないですか。そうなると、国民だって応援したくなりますよね。本人はプレッシャーがあるかもしれませんけど、日本にルーツのある選手のパイオニアになってくれることによって、WBCという大会の存在価値も高めてくれると思うんです」
ヌートバーは「下位の打順が適している」
――プレーヤーとしてのヌートバー選手は、昨シーズン、カージナルスで108試合に出場してホームラン14本と、主力級の働きをしただけに期待が高まります。
「すごくアグレッシブな選手です。しっかりとコンタクトすればホームランがあるし、守備では肩が強く、脚もそこそこ速いので、相手によっては1番を任せてもいいくらいです」
――6番か7番を予想する識者が多いですが、1番の適性もある、と。
「切れ目のない打線にするなら、下位の打順が適しているとは思います。理想としては、出塁率が高くて長打力もある吉田(正尚)選手が1番を打てば日本の強みを出せます。2番に所属チームでも打ち慣れている大谷選手を据えることで、超強力な1、2番が結成されるのも魅力的ですしね。クリーンアップはおそらく、村上(宗隆)選手、山川(穂高)選手、岡本(和真)選手あたりが任されるでしょう。彼らで得点を取り損ねたとしても、次にヌートバー選手が控えていれば、相手からすれば脅威のはずです」