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「昔はイキってた。今はイキってない!」ゴルフ界の異端児“ギャルファー”金田久美子33歳はいつから「謙虚な人」を目指すようになった?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAtsushi Tomura/Getty Images
posted2023/02/28 11:06
新シーズン開幕を控える金田久美子(33歳)。プロゴルファーとしてのキャリアを積み重ねる中で「なりたい自分」の理想が少しずつ変化してきた
2020年シーズンの開幕直後、ツアーはコロナ禍で中断を余儀なくされ、金田にも強制的に休みがもたらされた。10年以上塞がっていたスケジュールにぽっかりとできた空白。金田はそこでようやく呼吸ができた。みるみる心が晴れていった。
「目の前の試合がなくなったことで心が一旦リセットされて、びっくりするぐらい気が楽になったんです。試合に出なくていいし、正直ずっとこのまま休みが続いてほしいとすら思いました。普段の生活で、やっと明るい気持ちを取り戻すことができた。気を取り直せたっていうのかな、ゴルフだけじゃなくて、人生の」
こんがらがっていた技術面を解きほぐす貴重な機会にもなった。短いオフでドタバタしていた例年とは違い、悩みを抱えていたスイングも、ショットも、たっぷりある時間の中で試行錯誤を繰り返して改善策を探した。
「ここで戦っているわけにはいけない」
ツアーが徐々に再開され始めた夏頃、賞金シードもなく、予選会でも出場権を確保できていなかった金田は、レギュラーツアーには出られず下部ツアーに出場することになった。これからという若手ならいざしらず、長年レギュラーで戦い続けた選手にとっては、都落ちのような心境もあったに違いない。
「ずっとレギュラーツアーにこだわってプレーしてきたから、久しぶりにステップアップに出なきゃいけないというのは、もどかしい気持ちがすごく大きかったです。でも試合慣れもしなきゃいけないし、出られる試合には出るべき。きちんと向き合おうと思って出たんですけど……」
10年ぶりの下部ツアーは、レギュラーツアーとはまったく別物に感じられたという。少なくとも常に勝利を切望してきた金田の求める場所ではなかった。
「え? みんな本気で勝ちたいと思ってる? っていう雰囲気だったから、やっぱり自分がその場にいることが悔しくて、もどかしくなりました。プレーのレベルの問題でもなく、なんかぬるい場所って感じがした。だからって勝てるわけじゃないんだけど、ここでずっと戦っているわけにはいかないと思っていました」
厳しい言葉ではあるが、それは半分は自分に向けられている。その反骨心があったから金田は這い上がって翌年からレギュラーツアーに舞い戻ることができた。
そして昨季ついにツアー2勝目を挙げ、今年は3月2日に始まる開幕戦で15年目のシーズンを迎えようとしている。