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「日本代表、羽生結弦――」東京ドーム公演中に行った緊迫の“6分間練習”…3万5000人の前でつかんだ“夢”「まだまだつかみきれていない夢も…」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph by2023 GIFT Official

posted2023/02/28 11:04

「日本代表、羽生結弦――」東京ドーム公演中に行った緊迫の“6分間練習”…3万5000人の前でつかんだ“夢”「まだまだつかみきれていない夢も…」<Number Web> photograph by 2023 GIFT Official

『GIFT』公演で異例の6分間練習を行った羽生結弦。東京ドームに詰めかけた3万5000人がその一部始終を見守った

アスリートとしてのかわらぬ魂

 感謝を捧げつつ、一人であることの重さも語っていたが、ストーリーや演出も羽生のスケーターとしての存在あればこそ完成したものだった。

 この日もオープニングから『火の鳥』『ホープ&レガシー』『あの夏へ』(「千と千尋の神隠し」)や『バラード第一番』、製氷のための休憩を挟んだ後半には『「レット・ミー・エンターテイン・ユー』『阿修羅ちゃん』(Ado)『オペラ座の怪人』『いつか終わる夢』『ノッテ・ステラータ』、アンコールで『春よ、来い』『SEIMEI』と完走。切れのあるダンスやコンビネーションを含む4回転ジャンプ、トリプルアクセルなど、これまでのレベルを維持したうえで、新しいプログラムもこなし、むしろ体力が増しているのではないかと思わせる演技を披露した。そこにはスケーターとしての、アスリートとしてのかわらぬ魂があった。

2022.2.10 Beijing Olympics

 象徴的だったのは前半の締めくくりだ。スケーターとしての成長をアニメーションで振り返りながら、最後に映し出された「2022.2.10 Beijing Olympics」の文字。やがてその数字は進み、公演日の「2023.2.26」を示す。その直後、リンクサイドに白いジャージを着た羽生が姿を現す。試合さながらに脇目も振らず真剣な表情で6分間練習を行い、演じたのは『序奏とロンド・カプリチオーソ』。2021-2022シーズンのショートプログラムであり、北京五輪では他の選手がつけた氷上の「穴に乗っかりました」というアクシデントが起こり、冒頭の4回転サルコウが1回転となった“未完”のプログラムと言える。

 アナウンスは英語でなされた。それが北京をさらに想起させる。

 経歴が伝えられ、そしてこう告げる。

【次ページ】 『ロンド・カプリチオーソ』を選んだ理由

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羽生結弦
北京五輪

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