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「日本代表、羽生結弦――」東京ドーム公演中に行った緊迫の“6分間練習”…3万5000人の前でつかんだ“夢”「まだまだつかみきれていない夢も…」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by2023 GIFT Official
posted2023/02/28 11:04
『GIFT』公演で異例の6分間練習を行った羽生結弦。東京ドームに詰めかけた3万5000人がその一部始終を見守った
『ロンド・カプリチオーソ』を選んだ理由
「Representing Japan, Yuzuru Hanyu」
日本代表、羽生結弦――。
6分間練習を終え、羽生は滑り始めた。冒頭は4回転サルコウ……決めてみせた。その後もジャンプを着氷していきフィニッシュ。肩が激しく上下する。右拳を握りしめる。表情にはやりきった思いが表れているようだった。
「北京オリンピックでやりきれなかったという思いが強くあったプログラムです。あのプログラムには夢をつかみきるという物語が自分の中にはあります。この『GIFT』って、ストーリーの中に夢という存在がものすごく大きくあって。そういう意味でも、まず前半の一幕の中で夢をつかみきった、っていう演出をしたかったというのが、『ロンド・カプリチオーソ』を選んだ理由です。ただ、北京オリンピックを連想させるような演出をした上で『ロンカプ』をやったのは、あのときに夢をつかみきれなかったからであって。あのとき、つかみきれなかった夢を今はつかみとるんだ、と。逆にまだまだつかみきれていない夢も、4回転半(クワッドアクセル)とかありますけど、それに向けてこれからも突き進むんだ、みたいなイメージを込めて滑らせていただきました」
『一期一会』な演技が1つずつできた
公演のストーリーに沿いつつ、あの日の思いを成就させた演技は、何よりもアスリートたる意識と、怠らない日々を示していた。前半、いくつものプログラムを滑った上での、演技だったのだから。
記念すべき公演は終わった。わずか1日の、いや1日限りだからこそ、成し得たこともあった。
「フィギュアスケートならではの『一期一会』な演技が1つずつできたっていうことに関しては、自分自身、すごく誇りを持っています」
羽生結弦は立ち止まることなく、3月の新たな公演へと進んでいく。
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