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「日本代表、羽生結弦――」東京ドーム公演中に行った緊迫の“6分間練習”…3万5000人の前でつかんだ“夢”「まだまだつかみきれていない夢も…」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by2023 GIFT Official
posted2023/02/28 11:04
『GIFT』公演で異例の6分間練習を行った羽生結弦。東京ドームに詰めかけた3万5000人がその一部始終を見守った
「ICE STORY」と銘打ったように、序盤から終演まで、夢や苦しみ、生まれてくる葛藤、これまで感じてきた孤独など羽生の半生を描いたような物語がスクリーンに映し出される。そしてその映像が羽生本人の言葉、ナレーションによって進んでいく。
羽生が作った「ひとりになったときに帰れる場所」
そこに12のプログラムが織り交ぜられる。オーケストラやバンドの演奏、プロジェクションマッピングなどの効果的な演出によって、広大な空間に羽生結弦が思い描いた世界が現出していく。
「自分自身が今までの人生の経験の中で独りということを幾度も経験してきましたし、実際に感じることもいまだにあります。それは僕の人生の中で常につきまとうものかもしれないです。ただそれは僕だけではなくて大なり小なり皆さんの中で存在しているもので、もちろん僕の半生を描いたような物語でありつつ、皆さんにとってもきっと、こういう経験あるんじゃないかなと思って綴った物語たちです。少しでも皆さんのひとりという心に贈りものを、というか。ひとりになったときに帰れる場所を提供できたらいいな、という風に思って、この『GIFT』を作りました」
公演中の歓声や拍手、終演後の充足感に満ちた空気にはそれが伝わっていたことが感じられた。
「2時間半もつかな」って正直思ったんですけど…
その成功を支えたのは、やはり羽生という存在にほかならない。
終演後の思いを尋ねられ、羽生は答えた。
「ほんと、大変なことだらけでしたけど、まずはドーム公演ということよりも、一人でこの長さのスケートのエンタテインメントというものを作るということが非常に大変なことで。今シーズン初めてまず、完全にプログラムを単独で滑りきるというショーをやってみて。『2時間半もつかな』って正直思ったんですけど、でも、ドームという会場だからこそできる演出と、MIKIKO先生やライゾマティクスさんや、東京フィルさん(東京フィルハーモニー交響楽団)だったり、名だたるメンバーが集まってくれたからこそ、総合エンタテインメントが作れたのではないかなと今は実感しております」