猛牛のささやきBACK NUMBER
監督カミナリ報道や“代表降りろDM”に困惑も、宇田川優希(24歳)に笑顔が戻った理由は? WBC合宿はツンデレ由伸に「絶対くっつく」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2023/02/20 06:00
WBC宮崎合宿に合流し、ともにオリックスから選出された山本由伸(右)らと笑顔で練習に参加した宇田川優希(24歳)
キャンプイン時は体重が101kg。宇田川自身はオフに増やして最終的に97kgあたりまで絞るつもりでいたが、その時点ではまだ重そうで、何より慣れないWBC球の扱いに苦しんでフォームを崩し、球威も制球力も落ちていた。
だが食事の節制を行い、体重は、中嶋監督から課されていた、昨年のCSや日本シリーズの時期と同じ97.5kgをクリア。今年初めての実戦登板となった2月14日の紅白戦では、1イニングを無安打無失点に抑えた。スピードと重量感を備える宇田川らしいストレートが戻ってきた。
紅白戦後、晴れやかな表情で言った。
「ずっと下半身と上半身の使い方がバラバラになっていました。昨年は下半身の縦回転の動きができていたのに、それが横回転になっていて、上半身は縦回転だったので、バランスが崩れて力が入らず、ボールがあちこちに行っていた。ボールを気にしすぎてそうなったと思います。WBC球は投げづらいというのを聞いて、そこの握りや手の動きばかり意識していたから、気づかないうちに体が使えなくなっていた。でも体をちゃんと使えるようになったら、もうボールの違いは気にならなくなりました。久々にいい感覚でした」
「いい時に比べるとまだ60〜70%」と言うが、手応えを漂わせた。
宇田川を支えた周囲のサポート
そこに至るには、周囲の必死のサポートがあった。かつて日本ハムなどでダルビッシュ有(パドレス)や大谷翔平(エンゼルス)のトレーニングコーチも務めた中垣征一郎巡回ヘッドコーチや、厚澤和幸投手コーチは、宇田川の映像を分析。
「宇田川らしい腕のスイングが出るところで全然体を動かせていなかったので、これは大変だろうなと思った」と中垣コーチは言う。
昨年の宇田川は、春から徹底的に体づくりに取り組み、その積み重ねの上に、中垣コーチが指導するドリルで体の動きを噛み合わせ、飛躍した。このキャンプではそのドリルにもう一度、一から取り組み、突貫工事で修正した。
WBC球が大きなストレスになっていると感じた厚澤コーチは、NPB球で投げて感覚を取り戻すことを提案した。
「ボールに対する拒否感が顔に出ていましたから。もう二度とあのボールは触りたくない、というような顔をしていて、あまりにもかわいそうだった。やっぱり野球を、投げることを好きでいてほしいですから。不安を取り除くために、ちょっと普段のボールに戻して、気持ちのいい腕の振りの感覚を戻させてあげようと。そうしたらやっぱり気持ちよく腕を振っていましたね」
両方のボールを数球ずつ交互に投げ、感覚を戻していった。