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三笘薫はなぜ「アジア版バロンドール」を獲得できなかったのか? 日本人唯一の投票者の見解《1位ソン・フンミン、5位三笘、6位鎌田、7位堂安》
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2023/02/18 17:11
2022年のBFA最優秀選手に選ばれたのは、W杯でのフェイスガードが記憶に新しいソン・フンミン。6年連続8度目の受賞となる
だが、筆者は、敢えてソンを1位にはしなかった。W杯の内容と結果から、2022年は日本人の誰かを1位にすべきと考えたからである。
たしかに韓国も日本同様にベスト16に進んだが、日本のような強烈な印象を世界に与えてはいない。またソン自身も、左眼窩底の骨折のためフェイスマスクを着けて出場した大会で、キャプテンとして獅子奮迅の働きをしたわけではなかった。
ところが投票をした60人のジャーナリスト(AFC加盟の国・地域から40人、その他の地域から20人)のうち、半分の30人がソンを1位に選んだ。2位に選んでいるものが15人である。トップ5に入れなかったのは7人だけで、彼を無視したジャーナリストが7人もいたことの方が逆に驚きといえるかも知れない。筆者も受賞はたぶんソンだろうなと思いながら、鎌田を1位、ソンを2位(3位遠藤、4位アルドサリ、5位三笘)に選んだのだった。
2位のタレミは2021~22年シーズンにFCポルトで20得点12アシストを決めて、クラブをリーグ優勝に導いている。またイラン代表でも、W杯ではイングランド戦で2得点を決めている。3位のアルドサリは、サウジアラビアがアルゼンチンを破った試合で決勝ゴールを決めたサプライズの立役者である。4位のキム・ミンジェも、9月にアジア人として初のセリエA月間最優秀選手に選ばれている。
それぞれが実績を残しているが、三笘や鎌田、堂安、遠藤、冨安らが、2022年の活躍度で彼らに劣っていたとはいえない。上位に食い込めなかったのは、日本人同士の間で票が割れたからとしか言いようがない。
「アジア版バロンドール」の選出方法
BFAは、アジア版バロンドールを目指して、タイタンスポーツが2013年に創設した。投票形式もバロンドールを踏襲し、主催者の作成した候補者リストから、1~5位の順位をつけてジャーナリストたちが投票をおこなう。1位に6ポイント、以下2~5位に4~1ポイントが付与されて、最多ポイントを獲得したものがその年の受賞者となる。選考基準も同様で、第一の基準が個人のパフォーマンスとゲームへの影響。第二がチームのパフォーマンスとタイトルの獲得、第三がパーソナリティ、フェアプレーである。
バロンドールとの違いは、候補者リスト外の選手を選んでも構わないこと。今回でいえば、リストには名前がなかった吉田麻也や旗手怜央、家長昭博にも票が投じられた。また選考対象となるのは、AFC加盟国・地域に所属する選手に限らない。アジアでプレーする他の大陸連盟の選手たちも受賞資格を持つ。2022年はオディオン・イガロ(ナイジェリア/アル・ヒラル)やマイケル・オルンガ(ケニア/アル・ドゥハイル)がこれにあたり、過去にはエウケソン(ブラジル/広州恒大)やダリオ・コンカ(アルゼンチン/広州恒大)、ラファエル・シルバ(ブラジル/浦和レッズ)らがトップ3入りを果たしている。